「あんなに楽しそうなラリーを見たのは久しぶり」。

 2014年9月末に開催した米オラクルの年次イベント「Oracle OpenWorld(OOW)2014」では、ラリー・エリソン氏が、数千人に上る聴衆を前にデモンストレーションを披露。「CTO(最高技術責任者)になったから、デモも自分でやらなければならないんだ」と、ステージ上でうれしそうに自らPCを操作する姿に、多くの関係者が冒頭のような感想をもらした(写真1)。

写真1●デモを披露する、米オラクルのラリー・エリソン経営執行役会長兼CTO
写真1●デモを披露する、米オラクルのラリー・エリソン経営執行役会長兼CTO

 OOWに先立つ9月18日(現地時間)、オラクルはエリソン氏がCEO(最高経営責任者)を退任し、経営執行役会長兼CTOに就任すると発表した。後任のCEOは、サフラ・キャッツ氏とマーク・ハード氏の2人。キャッツ氏が製造、財務、法務部門を統括し、ハード氏は営業、サービス、業界別グローバルビジネス部門を統括する。

 そして、CTOとなったエリソン氏はソフトウエアとハードウエアのエンジニアリング部門の指揮を執るという。もちろん、共同創業者として1977年にオラクルを立ち上げて以来、唯一のCEOであったエリソン氏は、ずっと同社の製品・サービスを率いてきた。今回、“テクノロジーに強いCEO”からCTOに転じ、晴れて製品エンジニアリングや技術開発に専念できるようになったわけだ。

 CTOに就任して初めてのOOW。エリソン氏はステージ狭しと歩き回り、ときにコーラを飲みながら、自社の優位性を聴衆に訴えた。米セールスフォース・ドットコムや、欧州のSAPなどを次々と標的に掲げ、弁舌爽やかに切って捨てる。並み居るライバルを「プラットフォーム」という議論に載せてしまう戦法を目の当たりにした筆者は、“けんか上手”だなという印象を新たにした。