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記者の眼

それでもやっぱりマイナンバーカードは必要か?

井出 一仁=日経BPガバメントテクノロジー 2017/10/16 日経BPガバメントテクノロジー

 マイナンバーカードの普及がなかなか加速しない。2017年8月末時点の交付枚数は約1230万枚。人口普及率は9.6%であり、今のペースだと2017年末に人口普及率が10%に届くかどうかというところ。交付開始前の2015年に野心的な目標として政府が掲げた「2019年3月末に8700万枚」という数値に1年半で到達することはもはやないだろう。

 だが、カードがなかなか普及しないからと言って、マイナンバー制度がうまくいっていないという批判はまったく当たらない。制度の目的である「行政の効率化」「国民利便性の向上」「公平・公正な社会の実現」の大半は、政府機関や自治体などのバックオフィスの連携によってもたらされるからだ。11月には情報提供ネットワークシステムを介した情報連携の本格運用が始まる見込みであり、制度は軌道に乗りつつある。

 マイナンバーカードは名称の通り裏面に12桁の数字から成るマイナンバーが記載されており、マイナンバー制度の象徴のように見られることが多い。ところが実体は必ずしもそうではない。

 マイナンバーカードの利便性の多くは、実はマイナンバーそのものではなく、カード内のICチップに組み込まれた「公的個人認証(JPKI:Japanese Public Key Infrastructure)」機能によって実現されるものである。公的個人認証サービスはマイナンバーを一切用いない。つまり利用シーンや得られる利便性の観点からマイナンバーカードの実像を表すなら、「マイナンバーも記載してある公的個人認証カード」という表現がふさわしい。

 実際、マイナンバーが記載されたカード券面を提示する機会はそれほど多くない。現状ではマイナンバーの利用が社会保障・税・災害対策に関わる事務に限定されていることから、市町村の窓口で行政事務手続きを申請するシーンが主である。

 ほかにも公的な身分証明書として、銀行の口座開設、携帯電話サービスの申し込み、あるいはレンタルビデオ店の会員加入など、民間の用途でも利用できるが、運転免許証などほかの身分証明書を持っている人にとって、マイナンバーカードの出番はほぼない。

 市町村の窓口でもマイナンバーカードがなければ行政手続きができないわけではない。通知カードと運転免許証などの写真付き身分証明書を持っていれば、手続き上の問題はない。さらに、通知カードを忘れたとしても、住民登録がある市町村の窓口なら、本人であると証明できれば職員がマイナンバーを調べてくれる。

 一方、公的個人認証機能によって実現されるサービスは多彩だ。住民票の写しや印鑑登録証明書を365日早朝から深夜まで入手できるコンビニ交付サービス、マイナポータルでのログインや子育てワンストップなどの各種行政手続きでのオンライン申請に加えて、今後は銀行キャッシュカードや健康保険証、興行チケットなどとしてもマイナンバーカードを使えるようになる。

 正確には、マイナンバーカードのICチップには、公的個人認証に加えてマイナンバーを扱わないもう1つのサービス形態もある。ICチップの空き領域に、アプリケーションと利用者番号などのデータを格納して実現する。公的個人認証と併せて、総務省は「マイキー」部分と呼んでいる。

 空き領域を利用して、一部の政府機関や自治体、企業はマイナンバーカードを職員証として利用している。職員情報や入館権限などはカード内のICチップに格納する。ICチップの機能を使っているだけであり、公的個人認証とは無関係でマイナンバーとも関係ない。自治体は条例を定めれば、印鑑登録証や図書館カードなどとしても使えるようにできる。

 「そんなに便利なカードなら持ちたい」と感じた人には、ぜひマイナンバーカードを取得していただければと思う。だが、これで終わりでは「記事のタイトルと中身が合っていない」と指摘されてしまう。本題は、「こんなに便利なマイナンバーカードだが、カードを持っていない人にもその大きな恩恵を及ぼすことができるのではないか」という話だ。

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