「おかしいな、なぜ通信が途切れ途切れになるんだろう」。編集部であるデスクが渋い顔をしている。購入したノートパソコンが不調なのか、無線LANへの接続が、時々切れてしまうらしい。数日後様子を聞いてみると、「会社では通信できるようになったが、自宅では相変わらず無線LANがおかしい」という。

 無線LANは、オフィスでも家庭でも使う通信インフラとなったが、有線LANと比べて扱いが難しい。目に見えない電波の状態は、把握しにくい。突然、通信速度が低下したり、つながりにくくなったりした経験は、誰しもあるだろう。

 特に、無線LANアクセスポイントの設置場所や設置台数は、システム管理者にとって悩みの種だ。設置場所や台数によって、無線LANの速度やつながりやすさが、大きく左右されてしまうからだ。

 できれば、アクセスポイントをあちこちに配置して実際に通信環境を検証し、ベストな台数と設置場所を見つけたいところ。しかし、そのための機器や設備を用意するのは、一般の企業には高いハードルだ。「従業員100人が快適に使える無線LANを構築してほしい」と言われても、100台の端末をそろえて、一斉に通信するなんて、難しい。

 それを実現するのが、無線LANのシミュレーション設備だ。

 今回、無線LANの構築を手掛けるベンダーのラボを取材する機会を得た。無線LANのシミュレーションが可能な施設だ。シミュレーションといっても、一体どんな設備がどのくらいあるのか、興味津々で足を運んだ。

日本有数のラボに潜入

 訪れたのは、三井情報(MKI)の「ネットワークラボ」だ。同社の地下にある施設で、関係者しか立ち入れない。ネットワーク全般の検証設備が並ぶ一角に、無線LANのための機器が並んでいた。

三井情報(MKI)の「ネットワークラボ」
三井情報(MKI)の「ネットワークラボ」
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 「無線LANの検証環境を整えたのは2013年。ちょうど携帯電話事業者による、公衆無線LANサービスを提供するための設備投資が活発な時期だった」と、MKIネットワーク技術部の長山大路部長は話す。「大きな案件で、検証作業のために100台以上の端末をかき集めたこともある。しかしそうした作業にも限界はある。そこで検証設備を整えることにした」。

 このラボでは、仮想的な無線LAN環境を構築し、そこで無線LANアクセスポイントや端末の性能検証を実施できる。端末台数や電波環境、距離などを、自在に変更できるという。

 「あるときは、設置場所に合わせてアンテナの色を変えてほしいという要望があった。ただ、塗料の種類によって電波の減衰度合いが変わる可能性があったので、板に塗料を塗って性能を検証した」(長山部長)。

 2014年には設備を増強し、仮想的に動作させることができる無線LAN端末の台数を、3000台から5000台に増やしたという。「中には1台数千万円の機器もあるので、かなりの投資だ。無線LAN検証設備としては日本有数」(長山部長)という。

ラボの一角にある無線LANの検証設備
ラボの一角にある無線LANの検証設備
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