全国労働者共済生活協同組合連合会(全労済)は2015年6月、新たな情報システムの運用を始めた。名称は「事務ミス・トラブル報告システム(図1)」。事務上のミスに加えて、コンプライアンス(法令順守)や人事に関わるトラブルの情報を収集し、全労済が展開している保障(共済)事業に生かすのが狙いだ。

図1●事務ミス・トラブル報告システムの画面例
図1●事務ミス・トラブル報告システムの画面例
[画像のクリックで拡大表示]

 システムの機能自体は単純だが、実現するのは容易でない。まず、組織の壁を超えた情報収集の仕組みを実現しなければならなかった。

3階層の組織で各都道府県が一定の経営責任

 全労済は総資産が約3兆5000億円、従業員数が約3500人(関連会社などを含めると約8000人)の巨大組織だ。しかも組織形態が複雑で、各都道府県にある「単位本部(北海道本部、茨城県本部など)」、地域単位の「事業本部(北日本事業本部、東日本事業本部など)」、全体を統括する「本部」という3階層から成る。本部と単位本部は「本社と営業所の関係とは異なり、それぞれの単位本部が一定の経営責任を負っている」と経営リスク統括室の冨永紅室長は話す。

 以前から、本部では事務ミスの情報を収集・管理していたが「対象は本部に上がってきた事案のみ。単位本部で発生する小さな事務ミスに関する情報までは収集できていなかった」(冨永室長)。ここでいう事務ミスとは、「窓口で顧客に対して、間違った説明をしてしまった」「顧客向けパンフレットの校正が甘くて間違いを見逃し、印刷をやり直した」などを指す。