9月に財務省が与党税制調査会に案として提示した「日本型軽減税率制度」。ソーシャルメディアなどでは「政府に買い物の中身まで把握される」「プライバシーの固まりのような個人番号カードを常時携帯していて大丈夫か」などの批判が巻き起こり、従来型の軽減税率の導入を公約している公明党からも明確に反対を突き付けられ、評判は散々だ。自民党内では当初に比べ理解が広がりつつあるとの報道もあるが、与党税調での議論の先行きは全く見通せない。

 ソーシャルメディアでの批判の的になったのは、買い物金額に応じて税率軽減分を後から還付するために、買い物のたびに店頭で個人番号カードをかざして支払い記録をセンターに蓄積するという仕組みである。「個人番号カードをかざすこと」が、即「マイナンバーとひも付けること」と誤解され、「政府による国民監視」との批判が広がってしまった。

 マイナンバーの通知カードが世帯ごとに届くのが10月中旬から11月末ころ。同封される交付申請書を使って申し込み、個人番号カードの交付を受けられるようになるのは2016年1月から。まだ誰も手にしたことがない個人番号カードだけに、現時点で様々な誤解が生まれるのはやむを得ない面もある。

 だが、「個人番号カードはマイナンバーそのものではない」、さらに「個人番号カードにはマイナンバーを使わない便利な利用法がたくさんある」。こうしたことが国民に広く理解されなければ、行き過ぎた警戒心が個人番号カードが持つ大いなる可能性を閉ざしてしまいかねない。交付開始から10年以上を経た2014年3月時点でも交付枚数が666万枚、人口普及率にしてわずか5.2%にとどまっている住民基本台帳カードの二の舞は何としても避けなければならないはずだ。