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記者の眼

「シン・ゴジラ」にみる、ニッポンのITインフラの虚構と現実

浅川 直輝=日経コンピュータ 2016/09/23 日経コンピュータ

※この記事には映画「シン・ゴジラ」の内容に関する記述が含まれています。

 「シン・ゴジラ」、堪能した。

 IT記者として、これほど心躍る映画があったろうか。

 とにかく、緊急時の政府対応におけるITの描かれ方が、過剰とも思えるほどリアルなのである。政府内に会議体が立ち上がるたび、キャスター付きの複写機が大部屋にゴロゴロと運ばれ、仮設のネットワークが構築され、作業用PCの山が積まれる。

 使うPCも組織ごとに異なる。私の記憶が正しければ、内閣府の職員は富士通か米アップル、環境省はパナソニック「Let'snote」、陸上自衛隊は同じくパナソニックの耐衝撃PC「TOUGHBOOK」を使っていた。

 シン・ゴジラには、「科学特捜隊」とか「NERV(ネルフ)本部」とかのような、放送当時の技術水準からかけ離れた空想的ITの出番はどこにもない。劇中の年代は不明だが、「現実(ニッポン) 対 虚構(ゴジラ)」というキャッチフレーズの通り、2016年現在のニッポンのリアルなITで、ゴジラに立ち向かっているのだ。

唯一の空想?「世界各地のスパコンで分散して演算する」

 ただその中で一点だけ、やや空想が混じっているようなITのユースケースがあった。ストーリーの中で、スーパーコンピュータが重要な役割を果たしたことだ。

 ネタバレにならないよう伏字で概要だけ言えば、ゴジラを凍結させる「ヤ○○○作戦」の実現可能性を検証するため、ゴジラが体内に持つ「○○○○○○膜」の分子構造を解析する必要あった。

 だが、国内のスパコンでは、作戦日までに演算が間に合わない。そこで主人公らは、世界のスパコンセンターに演算の分担を依頼し、見事に演算を完了させた――というものだ。

 シン・ゴジラの庵野秀明総監督がかつて手掛けた「新世紀エヴァンゲリオン」の旧劇場版(1997年公開)では、元々は日本で開発されたスパコンに対し、その後世界各地に設置された同型のスパコンがサイバー攻撃を仕掛ける、というシーンがあった。シン・ゴジラでは、逆に世界各地のスパコンが日本を助けてくれる構図となっており、胸が熱くなる展開だ。

 とはいえ、わずかな期間のうちに分子構造解析のプログラムを用意し、世界各地のスパコンにデータを配布し、分散して演算する…といったことは、現実には可能なのだろうか。リアルを追究したシン・ゴジラだからこそ、ここはリアルに考察してみたい。

スパコン運用技術者に聞きに行く

 シン・ゴジラの劇中では、日本のスパコンが構造解析のため演算している様が映し出される。筐体にあるのは「NEC」の名前と、どこかで見たことがある丸型のロゴマーク。おお、これは地球シミュレータの3代目ではないか。

 国産スパコン「地球シミュレータ」は、初代が2002年3月に登場。世界のスパコンランキングで2年半にわたって首位を保ち、世界に衝撃を与えた。2015年4月からは、3代目となる地球シミュレータが稼働している。

 「世界各地のスパコン連携は本当に可能なのか?」を知るには、地球シミュレータを運用する海洋研究開発機構(JAMSTEC)に直接聞くほかなかろう。

 というわけではるばる訪ねたのが、地球シミュレータが設置されているJAMSTEC横浜研究所。都心から1時間ほどの道行きである。

JAMSTECの横浜研究所
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