1985年に記者の仕事に就いたとき、当時の上司から「疑問文の見出しを避けよ」と指導された。見出しとは記事の題名を指す。例えば「ITpro編集長はソフトウエアの本質を理解しているか」といった見出しはよろしくない。

 疑問文の見出しは「結論から先に書く」という鉄則に反するからである。仮の話を続けると、取材をしてITpro編集長に難があると分かったら、「ITpro編集長はソフトウエアの本質を理解していない」という見出しを掲げて記事を書かなければならない。

 教えに従わず本稿の題名を『ITpro編集者はソフトウエアの本質を理解していない?』としたのは、9月15日に公開した『日本のリーダーはソフトウエアの本質を理解していない』という寄稿に関わる内容だからである。当初、「ITpro編集者はソフトウエアの本質を理解していない」としてみたが編集長から掲載許可が下りないと考え直し、疑問符を付けた。

 「ITpro編集者」は筆者自身である。「本質を理解している」と胸を張るつもりはないが「理解していない」とも思っていない。その曖昧な姿勢が疑問符に表れている。かつての上司の教えは「自分の姿勢をはっきりさせてから記事を書け」ということでもあった。

 ITproに過去書いた拙文群を見直すとソフトウエアの本質を主題にしたものが結構あった。例えば2015年の正月に公開した『ソフトウエア、それが問題だ Software Matters』がある。実はこの題名と『日本のリーダーはソフトウエアの本質を理解していない』を公開した寄稿欄(連載枠)の名称はまったく同じである。

 2015年当初、“Software Matters”という主題に沿って記事を書いていこうと考えたがうまくいかなかった。それよりソフトウエアの諸問題に関心を持つ方々に寄稿いただいたほうがいいと考え、“Software Matters”を寄稿欄の名称にした。

 寄稿の目次欄に掲載した通り、主旨は「ソフトウエアの諸問題と対策を日本や世界の論客の方々、そしてITpro読者の皆さんと考えていきます」ということである。