筆者は書籍の編集者をしているが、「編集者とは何をするのか」と聞かれて、説明に苦労することがよくある。

 「こんな本を読みたいと思っている人がいるんじゃないかなあと妄想して企画を立てて著者に執筆をお願いしにいく」とか「タイトルを考える」とか「著者の相談にのる」とかいうように説明してみるものの、著者が自ら企画を立てたりタイトルを付けたりすることもあるので編集者しかできないというわけではない。

 結局、何をやっているのかわからないのが編集者なのだが、不思議なことに優秀な編集者が作る本は面白い。

 社内外の優秀な編集者と比べて自分に足りないものはなにかと胸に手を当てて考えた筆者は、やはり「気が利かない」ということではないかと思い至った。

 「こんな本が読みたい」と言われる前に、気が利いて本を作れたら売れること間違いなし。著者の原稿執筆の手が止まったころに気が利いて連絡して相談に乗れたら、内容は面白くなるはず。読者や著者が喜ぶような気が利いたことが言えたら、もっといい本が作れるはず。ああ、それなのに、筆者自身は常日頃気が利かないとか、鈍いとか言われている。

 どうやったら気が利くようになるのだろうか――。そんなことを日々考えていた筆者は、新刊を編集しながら「もうすぐ私よりコンピュータのほうが気が利くようになる」とがっくりきた。

 いやでも、私だけではない。たいていの人間よりもコンピュータのほうが気が利くようになる。新刊『コンテキストの時代』には、そんなコンピュータの未来が記されていたのである。