「一般のビジネスパーソンが普段作っているようなExcel表を作ってほしい」――。簡単なようで難しい、こんな要望を筆者が受けたのは、2014年7月中旬のこと。何らかの財務報告を目的とした、10行程度の表を作ってほしいという。要望を出してきたのは、かつて外資系投資会社に籍を置き、Excelの達人として知られる、慎 泰俊氏である。

 筆者が同氏に依頼した原稿の執筆に必要だという。「ダメなExcel表を、見やすく分かりやすい表に変貌させる術を解説してほしい」とお願いしていた。すると、冒頭のようなメールを受け取ったという次第だ。

 要するに、「ダメなExcel表の例を作ってほしい」という逆依頼である。慎氏にとっては、見やすく分かりやすいExcel表を作成する作法が身に付いてしまっており、あえてダメなExcel表を作るというのは、かえって難しい作業なのだという。

 筆者にとっても、簡単な作業とは思えなかった。見にくく、分かりにくいExcel表を意図して作成した経験などなかったからだ。とりあえず、普段通りあまり深く考えずに表を作ってみた(図1)。

図1●筆者が作成したExcel表の作例
図1●筆者が作成したExcel表の作例
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 一見しても、それほど悪いExcel表には見えない。改善すべきポイントが少ないと、「ダメな作例」としては役に立たない。しかしあまりに分かりやすい欠点を盛り込んでしまうと、不自然になってしまうのではないか。迷いながらも、まずはこのExcel表を慎氏に送付することにした。