「建設業界はIT業界と似ている」。筆者はここ最近、建設業界向けのサービスを提供するベンチャー企業の取材を続けている。冒頭のコメントは話を聞いた先々で耳にした言葉だ。

 例えば「3K」という言葉が当てはまる業界が建設とITだという。中身を聞けば「きつい」「汚い 」「危険 」というような言葉を思い浮かべる。(「給料が安い」「休暇が取れない」「希望がない」という場合もあるという)。

 顧客による発注とベンダーの請負によってプロジェクトが成り立ち、大手が中堅中小企業に業務の一部もしくは大部分を再委託するという構造も似ている。いわゆる「多重下請け構造」だ。

 建設業界をITで変えようとする動きが高まっている。代表例が「i-Construction(アイコンストラクション)」だ。道路や橋などを建設する現場でITを活用する。調査・測量から設計、施工、検査、維持管理・更新といったほぼ全ての工程を対象としている。i-Constructionは国土交通省が主導して、2016年度から本格的に活動を進めている。2025年度までに建設現場の生産性を20%向上する目標を打ち出した。

 「Con-Tech(コンテック)」という造語も使われるようになってきた。施工管理や労務管理ソフト、発注者と施工業者を仲介するマッチングサービスなどを指すとされている。

 なぜ建設業界でITの活用が期待されている最大の理由は人材不足にある。建設現場で働く技能労働者は2024年までの10年間で、約110万人がいなくなる見通しだ。これは全体約340万人の約3分の1に当たる。高齢化が原因で離職するのだ。

 労働力不足が深刻な中、その解決策として期待されているのが、前述のi-ConstrucionやCon-Techというわけだ。ITを活用して業務を効率化し、生産性を向上させる。例えばドローン(小型無人機)や自動で施工する建設機械を使う。施工管理や労務管理はSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を導入する。