「いろんなデータを集めて分析して、その結果を経営陣や現場に発表するじゃないですか。すると『ああそれね。前から知ってたよ』と言われる。あれはこたえますねえ」――。

 あるデータサイエンティストへの取材で、こんな“がっかり体験”を聞いたことがある。どうやらこの人だけのものではないらしい。データ分析のコンサルティングや研修に携わるチェンジ(東京・港)の高橋範光取締役は、“それ知ってる症候群”と命名している。

 「ビッグデータ分析の結果は、現場を長年経験した人にとっては当たり前であることが少なくない。ことさらに『分析の結果、こんなことが分かりました』と言われると、『とっくに知っていたよ』と言いたくなる気持ちも分からないではない」と高橋氏。

 分析対象となるデータがどんどん「ビッグ」になるなか、私たちは「分析によってすごい発見が生まれるのではないか。これまでの常識が覆されるのではないか」という期待を抱かずにはいられなくなる。とはいえ、現実にはそんな大発見が日々生まれるわけではない。「それ知ってるよ」レベルの分析結果が大半を占めるのが実情だろう。