データベース(DB)が企業システムの中核機構であることに異を唱える人はいないだろう。そして、技術者ならオンプレミス(自社所有)環境でDBを“乗り換え”る作業がクリック一つで済むような簡単なことではないとも十分承知していると思う。記者はクラウドへのシステム移行事例を取材するケースが多く、DB移行でも苦労話をよく聞く。

 そもそもオンプレミス環境からクラウドにデータベースを移行するだけでも容易ではない。土木や建築、しゅんせつ事業などを手掛ける小柳建設は2016年9月、オンプレミス環境の基幹系システムを米マイクロソフトが提供するIaaS(インフラストラクチャー・アズ・ア・サービス)、PaaS(プラットフォーム・アズ・ア・サービス)関連のパブリッククラウドサービスである「Microsoft Azure」上に全面移行し、本格運用を開始した。

 移行で最初の課題となったのが、Azureの仮想マシンである「Virtual Machines(VM)」のインスタンスサイズの選定だ。工事案件を検索するのに使うDBサーバーはオンプレミス環境では米オラクルの「Oracle Databasa(Oracle DB)」を使っていた。移行に際して「Windows ServerをインストールしたVMを利用環境にして、Oracle DBをAzure上に移行した」(システム構築を手掛けたティーケーネットサービスの武田勇人社長)という。

 VMのインスタンスサイズは「オンプレミス環境の物理サーバーを仮想化し、アプリケーションのレスポンスやタスクマネージャーなどの情報を基に仮決めした」(ティーケーネットサービスの石垣比呂志リソースセンターITコーディネータシニアコンサルタント)。仮決め後、利用者の反応などを見て最適化していったという。

 工事検索サーバーはCPU負荷が低いものの、高いディスクアクセス性能が必要。検証を繰り返した結果、AzureのVMサイズにはSSDが利用できる「D2-v2」を選んだという。検証作業には「1~2カ月を要した」(石垣氏)。

 取材を進めるとオンプレミス環境からパブリッククラウドに移行するのをきっかけにOracle DBから他社DBに乗り換えたケースに出くわした。確かに、米アマゾン ウェブ サービス(AWS)や米マイクロソフトはユーザーがオンプレミス環境のリレーショナルデータベース(RDB)を自社クラウド上のRDBサービスに移行するための作業を支援するサービスを用意している。

 Oracle DBからの乗り換えを考えるユーザー企業には頼もしい。ただ、実際は一筋縄では行かないようだ。