「ユニバーサルサービス料=3円」──。毎月の携帯電話などの通信料に課金されるこの額について、なぜお金を取られているのか不思議に思う人も少なくないのではないか(写真1)。

写真1●電話番号ごとに一律徴収されるユニバーサルサービス料。現在は月額3円だ。
写真1●電話番号ごとに一律徴収されるユニバーサルサービス料。現在は月額3円だ。
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 この3円は、国民生活に不可欠な通信サービスとして全国あまねくサービスを提供することが義務づけられているNTT東西の固定電話について、赤字の一部を補填するために使われている。サービスを維持するのに、NTT東西だけにコスト負担させるのは厳しすぎるとして、他の事業者も補填の一部を担っているのだ。この枠組みを決めているのが、2006年度から運用が始まっているユニバーサルサービス制度である(関連記事:徹底解剖 ユニバーサル・サービス制度)。

 ただし、現行のユニバーサルサービス制度については、もはや実態に即しているとは言い難い。例えば110番や119番などの緊急通報は、10年前の時点で携帯電話発が固定発を上回っている。国民生活に不可欠な通信サービスが固定電話だった時代は、とうに過ぎ去っている。NTT東西の加入電話の契約者数自体も、年10%程度という水準で急減しており、2013年度末の契約者数は2300万まで減った。それに伴ってNTT東西の加入電話は、2005年度から赤字続き。ここ数年間は、毎年1000億前後の赤字額を計上している。

 こうした状況を踏まえて総務省は、ユニバーサルサービス制度の抜本的な見直しを進めていく方向性を固めた。2020年代の情報通信のあるべき姿を議論する総務省の「2020-ICT基盤政策特別部会」が8月末に打ち出した中間整理で(関連記事:総務省の基本政策委員会が中間整理案、モバイルの禁止行為規制は見直しへ)、「固定電話の維持に特化した現行のユニバーサルサービス制度の見直しを検討することが適当ではないか」としたからだ。また「ユニバーサルサービス基金の在り方については、利用者に過度な負担を強いるものとしないこと」とも付け加えている。

 ユニバーサルサービス制度の見直しは、競争だけでは成立しない離島や山間など条件不利地域のインフラ整備、維持の在り方など、国民の税金や基金の支出といったお金に直結した話でもある。従って、制度見直しの際は、広く国民的な同意が取られることが求められる。またユニバーサルサービスの議論は、2020年代の日本国内の基幹通信インフラの見直しにも関係してくる。ユニバーサルサービスとして提供され、これまで日本の基幹通信インフラを担ってきたNTT東西の加入電話の交換機が、2020年代に寿命を迎えようとしているからだ。

 そこで今回は、ユニバーサルサービス制度の見直しに関して、今後の議論の方向性や影響範囲などを少し考えてみたい。

“固定電話の維持”に特化したユニバをいかに作り替えるか

 総務省は、前述の特別部会の下部組織である基本政策委員会の7月の会合で、ユニバーサルサービス制度の今後の在り方について一度議論をしている。ここでの議論の進め方を見ると、総務省が考える課題は、(1)国民にとって不可欠となる通信サービスは何か、(2)経済合理性が無い山間や離島などの条件不利地域におけるインフラ整備とコスト負担の在り方、(3)これらの地域におけるインフラ維持とコスト負担の在り方、の3点に集約されそうだ。