ユーザーは想定以上に広がっている――。3年前ぶりに「超高速開発」について取材を重ねた結果、記者は素直にそう感じた。

 プログラムを100%自動生成するツールを用いて開発スピードを飛躍的に高める開発手法を「超高速開発」と名付け、特集「『超高速開発』が日本を救う」を日経コンピュータに掲載したのが2012年3月。同月には関連記事として記者の眼に「あなたの知らない超高速開発」を掲載した。

写真●みずほ銀行本店が入居するビルの外観
写真●みずほ銀行本店が入居するビルの外観
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 ことさらバズワードを生み出したいという気持ちはなかったが、ネット上の反響を見ると懐疑的・批判的な声も少なからずみられた。3年前の話で恐縮だが、業務ロジックを記述・設定すればプログラムを100%自動生成するとうたうツール群について「本当にできるのか」という投げかけもあれば、「また自動生成か。同じことの繰り返しだ」という、おそらくは過去にCASEツールで手痛い目に遭ったり「Σ(シグマ)プロジェクト」の“失敗”をご存知の方からだろうと思われる意見もあった。

 特集ではベンダーの動向よりも超高速開発で成功したユーザーの動向を多めに盛り込んだつもりだったが、超高速開発が当たり前のように新規開発や再構築、保守開発で選択肢に上るのはまだまだ先かなと、当時は少々残念に思っていた。

SoEは新技術に貪欲。ではSoRは?

 その後の3年間に、第3のプラットフォームとしてクラウドやビッグデータ、モバイルに注目が集まった。これらは顧客接点を作るシステムである「SoE(System of Engagement)」の分野で技術革新を起こしている。目まぐるしくサービスを改善するSoE分野では、アプリ作りに当たり前のようにアジャイル開発が受け入れられた。昨今は、新しいアーキテクチャとしてマイクロサービスも浸透してきた。

 他方、会計や人事といった記録のためのシステムである「SoR(System of Record)」はどうだろうか。クラウドをインフラに使ったりスマホをアクセス端末にしたりといった変化は起きているが、アプリケーション開発の手法そのものは変わっていないと感じている。アジャイル開発も、SoRでは当たり前になったという感じは受けない。

 「SoRで超高速開発がどの程度浸透しているのか」。取材を重ねてみると、大手企業が相次ぎ採用に動いている事実が見えてきた。その結果は、日経コンピュータ2015年10月1日号の特集にまとめた。中でも一番驚いたのが、みずほ銀行が勘定系システムの統合・刷新プロジェクトで使っていることだった。