まもなく、各府省による2015年度政府予算の概算要求が本格化する。社会保障費の自然増などにより財政状況は厳しさを増しているが、その中で例外的に大きな伸びが見込まれる分野がある。情報セキュリティ分野である。

 2014年度の情報セキュリティ分野の当初予算額は542億3000万円。2013年度の当初予算額に比べて300億円超、率にして126%の大幅増だった。2015年度予算の伸びはさらに大きくなる可能性がある。政府機関へのサイバー攻撃が急増しているのに加えて、2020年の東京オリンピック・パラリンピックの開催をにらんで、政府・与党がサイバーセキュリティの政策優先度を引き上げているからである。

 9月1週めの内閣改造を経て召集される秋の臨時国会では、政府のサイバーセキュリティ戦略の基盤となる「サイバーセキュリティ基本法案」が早期に成立する見込みだ。同法案は前通常国会の会期末直前の6月11日に衆議院に提出されたが13日には早くも可決され、20日に参議院に送られた。通常国会の閉会後も閉会中審査となっており、臨時国会が召集されれば最初の議決日に成立する可能性もある。

「サイバーセキュリティ基本法」で戦略本部を設置へ

 サイバーセキュリティ基本法は、国におけるセキュリティ上の脅威が急激に増大しているにもかかわらず、政府のサイバーセキュリティ推進体制に法的な根拠がないため役割や権限、責任が不明確で、体制や機能の強化が思うに任せないという反省に立ったものだ。法案は、自民党のIT戦略特命委員会を核とする議員立法で提出され、衆議院では同委員会の委員長を務める平井たくや衆議院議員が説明を行った。

 現状、政府のサイバーセキュリティ戦略は、高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT総合戦略本部)の本部令(政令)に基づいて、情報セキュリティ政策会議(議長:内閣官房長官)が担っている。事務局機能は、GSOC(政府機関情報セキュリティ横断監視・即応調整チーム)などを抱える内閣官房情報セキュリティセンター(NISC)が果たしている。