メンバー全員が協力し合いながら、チームの目標に向かって前のめりに仕事をする。そんな元気な現場をもっと増やしたい――。

 この思いで、日経SYSTEMSに「元気な現場」というコラムを始めたのが2012年夏のこと。それから約2年にわたりコラムを担当してきた。毎回、ユーザー企業/ITベンダーの元気な現場を取材し、リーダーの「現場を元気にする工夫」を紹介する。その多くは、他の現場にとっても有用な工夫だった。

 ここでは、そのなかから開発現場でプロジェクトマネジャーが実践している工夫を二つ紹介したい。

システムの価値を全員で共有し「やらされ感」を払拭

 現場の元気さを削ぐ大きな要因の一つに「やらされ感」がある。ユーザーやマネジャーの言うとおりに仕事をさせられている、という感覚だ。これをメンバーが持つと、気持ちがどんどん後ろ向きになる。特に、実際にシステムを使うユーザーとの距離が遠いベンダーの現場にとって、やらされ感の払拭は重要な課題だ。

 NTTコムウェア エンタープライズビジネス事業本部 第二ビジネス部 RIOプロジェクトも、この課題を抱えていた。この現場は、情報メディア大手A社向けに、種々のインターネットサービスにおける受注管理、請求管理、マスター管理といったバックエンドシステムの開発・運用を行う。変化の激しいインターネットサービスのシステムだから、必然的に納期が厳しく、しかもプロジェクト終盤でも仕様変更が頻発する。やらされ感が蔓延しかねない環境だ。

 そこで、リーダーの今井利光氏(エンタープライズビジネス事業本部 第二ビジネス部 営業部門 スペシャリスト、写真1)は、自分たちが作るシステムの価値をメンバーに伝えることで、やらされ感を払拭している。

写真1●NTTコムウェア RIOプロジェクトの主要メンバー(2014年7月時点)。右から3人目が、リーダーの今井利光氏
写真1●NTTコムウェア RIOプロジェクトの主要メンバー(2014年7月時点)。右から3人目が、リーダーの今井利光氏
写真撮影:菊池くらげ
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 「A社が新しいインターネットビジネスによって、どういう世の中に変えることを目指しているのか。社会にどんなインパクトを与えようとしているのか。これをメンバーに繰り返し伝える」(今井氏)。

 さらにサービスインした後、A社が開示した事業の経営状況をチームで共有。自分たちのシステムという意識を高め、保守開発においても、やらされ感を持たせないようにしているという。