ここ数年、ビッグデータへ注目が集まっている。でもビッグがいいのはデータだけじゃないかも──。ビッグデータの分析を含めたデータサイエンス関連記事を多く担当するようになった2013年後半、記者の頭にふとこんな思いがよぎった。

 言葉遊びのような発想だが、「ものは試し」といろいろ調べてみた。すると、あるものがビッグになって良くなっていると分かった。

 それはスクリーン。多くの会議や打ち合わせでは、資料をPC画面からプロジェクターに映したり、紙に印刷したりしている。ところが自動車メーカーや重機メーカーなどでは、設計段階の会議で、紙の資料などを準備する代わりに、大型液晶モニターなどのビッグスクリーンを導入。3次元CADの画面を投影し、設計担当者たちが課題や操作性などの使い勝手を確かめるのに活用していた。

ビッグスクリーン導入でシェア7割獲得のケースも

 「製造業の設計業務以外でも、ビッグスクリーンは使われているのではないか」。そう考えて調べてみると、ビッグスクリーン会議に取り組む企業が見つかった。花王グループの販売会社、花王カスタマーマーケティング(花王CMK、東京・中央)だ。2013年12月から、店頭マーケティングの施策立案のため、ドラッグストアなど取引先幹部との会議で活用していた(写真)。

[画像のクリックで拡大表示]

 花王CMKは、60インチ型4Kディスプレイ9面を壁一面に設置した専用ルーム「ジョイントビジネスラボ」を開設。そこで取引先の店頭写真を原寸投影して現状把握したり、シミュレーションソフトを使って店舗内の商品棚のレイアウトを検討したりしている。

 花王CMKはオムニチャネル戦略を行いつつも、顧客が買いやすい売り場作りの原点に立ち返ることを狙い、このジョイントビジネスラボを設置したという。

 さらに手術室設備最大手のセントラルユニ(東京・千代田)、建設大手の大林組も、これから建築していく手術室やビルの完成イメージを顧客とすり合わせる会議の場で、ビッグスクリーン上に3次元データを投影している。

 セントラルユニでは、高さ2.5メートル、横幅8.7メートルのビッグスクリーンを自社ショールームに常設。新しい病院建設や病院再開発プロジェクトに携わる医師や看護師が手術室の仕様を議論する場として活用している。

 2011年に設置以来、毎年3000人がその場を利用しているという。ビジネスにもつながり、5年ほど前は1割だった手術室設備のシェアを、7割と大幅に引き上げることができた。