「イカ焼き、いかがですかー!」「かき氷、おいしいですよー」。
8月半ば、東京・品川区の荏原町商店街は夏祭りで賑わいを見せていた。200軒の店が軒を連ねる商店街で、夏の目玉イベントだ。
屋台に射的に盆踊り。落語家や芸能人を呼んでのステージ。日本中、どこにでもある夏の夕暮れの風景だ(写真1、写真2)。
ただ荏原町商店街は今回、新たな試みをした。夏祭りを告知するチラシのデザインと印刷を、インターネットを使って発注したのだ(写真3)。
たかがネット印刷を使っただけと思うかもしれない。しかし当の荏原町商店街にとっては、高いハードルを越える決断を伴う一手だった。ネットやデジタルの活用とはほぼ無縁。チラシ印刷は、つきあいのある業者に10年来、頼り切りだった。
そんな荏原町商店街が、見も知らぬネット企業の利用を決断した。背景には地域活性化に向けた集客強化とコスト削減という、全国の商店街に共通する課題があった。
商店街の「会費」、10年で3割減
「以前はこの地で生まれ育った店ばかりで、商店街みんなで力を合わせて盛り上げていこうとしていた。そんな意識も、今じゃすっかり薄れてしまった」。荏原町商店街の島敏生会長は、こういって嘆く。
コンビニエンスストアにドラッグストア、マッサージ店。商店街には今や、ナショナルチェーンの店が数多く並ぶ。もともと地場の商店を営んでいた店主が、廃業したり代替わりしたりしてチェーン店に衣替えするケースも多い。