タッチパネルで患者のデータを入力し、真似したい名医の手術パターンを選択。注意事項を確認したうえで医者が「スタート」ボタンを押すと、離れた場所にあるロボットのアームが起動。ロボットが自ら判断してメスや鉗子を操り、短時間で手術を終わらせた――。

 SF映画でしかお目にかかれないような光景が、10年後には当たり前になるかもしれない。2014年の初夏、記者はある病院の手術室でそんな未来を垣間見た。

 主役となるのは、米インテュイティブサージカル製の手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」(写真1)。医師の操作に基づき、人体に開けた小さな穴にメスなどの手術器具を差し入れ、内視鏡手術を支援する機械である。

写真1●手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」のペイシェントカート。中央に内視鏡カメラを搭載し、3本のアームで手術を行う
写真1●手術支援ロボット「da Vinci(ダヴィンチ)」のペイシェントカート。中央に内視鏡カメラを搭載し、3本のアームで手術を行う
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 紹介してくれたのは、東京・杉並にあるニューハート・ワタナベ国際病院の渡邊剛総長だ(写真2)。2005年に日本人として初めてダヴィンチを使ったロボット心臓手術を行い、日本ロボット外科学会の理事長を務める、この分野の第一人者である。冠動脈バイパス手術などにダヴィンチを活用し、「心臓外科手術成功率は世界最高レベルの99.5%」(病院のウェブサイト)という。

写真2●ニューハート・ワタナベ国際病院の渡邊剛総長(右から二番目)
写真2●ニューハート・ワタナベ国際病院の渡邊剛総長(右から二番目)
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