Webコンテンツの基盤として一世を風靡した米アドビシステムズの「Adobe Flash」。その再生ソフト「Flash Player」の配布が2020年に終わる。既に2012年に開発終了を告げられたLinux版のユーザーにとっては「今さら何を」というところだが、実は悲報でしかない。Windowsと肩を並べるための希望の星だったからだ。

 Adobe Flashは、Linuxをデスクトップ用途で使う筆者には心強い味方だった。OSを問わないアプリケーション実行環境をWebブラウザー向けに提供してくれる。まだWebブラウザーの機能が少なかった時代に、デスクトップアプリケーション並みのコンテンツを作成できたFlash。Windowsはもちろん、Mac OS/macOS、Linux、さらにはSolarisといった複数のOSに対応する再生ソフトのFlash Playerさえインストールしてしまえば、どのOSでも同じFlashアプリケーションが動く。

 Webブラウザーから独立した、デスクトップ版Flashと言える「Adobe AIR」が2008年に登場したのも、デスクトップLinuxにとって朗報だった。AIRはほどなくして、日本独自の発展を遂げたソフトが必要なデスクトップLinuxユーザーにとって、実にありがたい存在に育ったのだ。

 AIRアプリでLinuxユーザーの目を引いたのは、アルファブレンドの「プリントマジック」や日本郵便の「はがきデザインキット」といった年賀状作成ソフトだ。オープンソース・ソフトウエア(OSS)の年賀状ソフトは、2005年で更新が停止している「KreetingKard」程度しかなかったが、AIRによってにわかに充実した。

短命のAIR、そしてLinux版の開発終了に驚く

 だがLinux版のAIR、Flashとも、2011年に転機を迎える。Linux版AIRは、2011年に開発が終了。2012年には、Linux版Flashもセキュリティ上の脆弱性修正を除いた更新を停止した。

 サーバー用途はともかく、デスクトップLinuxは市場規模が小さい。米ネット・アプリケーションズのデータによると、2012年のデスクトップLinuxのシェアは1.16%。2017年上半期に至っても2.36%でしかない。

 特にLinux版AIRの更新停止について、実用的なソフトが使えなくなることはもちろん、Linux版の登場からわずか3年という短命ぶりにがっかりしたことを覚えている。