「ITエンジニアという職業は本当に大変だ」。10数年、この業界を取材するにつけ、記者はこの思いを深くしている。システム開発のスキルとか新情報を絶えず身に付けなければいけない。仕事は過酷。挙げ句の果てに、作ったシステムは利用部門に必ずといっていいほど「使いにくい」と文句を言われる。

 かくいう記者自身も情報システムの一利用者だ。社内のシステムが新しくなったら、使い始めてひとしきり文句を言う。「ありえない、何この使い勝手」「ちゃんと使う人のことを考えてほしいよ」。記者の周囲も、絶えずこうぼやいている。「こちらの苦労も知らずに」。情報システム部門の、こんな声が聞こえてきそうだ。それでも口にせずにはいられない。「もっと使いやすくできないのかな」と。

「見た目9割」、状況は改善したか

 「情報システムも見た目が9割」。記者は2008年、日経コンピュータでこんな特集を組んだ。使い勝手や外見の良さというユーザーインタフェースだけが議論の対象ではない。スピーディーな応答やシステムを通じて得られる心地良さ、満足感、いわゆる「ユーザー体験(UX)」を高めることの重要性とその最前線をまとめたものだ。

 当時はちょうど、「RIA(リッチ・インターネット・アプリケーション)」と呼ぶ技術やSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)」が台頭してきたころ。これらを使いこなすことで、利用車に喜ばれるUXの実現を目指そう、というのが特集の趣旨だった。

 あれから7年。記者は状況はまるで改善していないとの実感を得ている。本記事のタイトルは、その実感を込めたものだ。むしろITエンジニアにとって、状況はより過酷になってさえいるのではないか。