政府の成長戦略の中に、プログラミング教育を2020年から必修化することが盛り込まれた。これに伴い、狂騒曲といえるほど、世の中には子供向けのプログラミング教育のコンテンツが登場している。

 ここ最近のニュースリリースだけを見ても、日本マイクロソフトが教育用ゲーム「Minecraft EE」の正式リリース(これまではベータ版)を発表したり、米Appleが開発者向けイベントWWDC 2016でプログラミング教育向けの新アプリ「Swift Playgrounds」を発表したりしている。

 筆者はプログラミングをはじめておよそ20年になるが、ここまでプログラミング教育が注目されたことは記憶にない。そもそも「プログラミング教育」という言葉は、社内の研修などの限られた場面でしか、使われていなかったのではないだろうか。それが、一般紙や新聞に載るまでに至っているのは、プログラミング教育がそれだけ盛り上がっているということだろう。

 しかし、筆者はプログラミング教育の義務化に懐疑的な印象を抱いていた。ITリテラシーを高める教育ならまだしも、プログラミング教育による論理的思考がそこまで必要なのかと思っていたからだ。筆者は大学で情報工学を専攻していたが、論理思考が身に付いていて、それを普段の仕事や生活で使っているかといわれると自信はない。

 現在の小学生がいくら賢いとはいえ、プログラミングの考え方は難しすぎる。例えば、小学生に関数や変数といった概念を理解してもらうのは困難だろう。また、プログラミングを教えられる教員を確保するのも難しいだろう。それならば、プログラミングを勉強する時間を国語や算数、英語などに当てた方が今後の役に立つと思っていた。