各種の設計書や障害原因を調査した報告書、関係者とのコミュニケーションに使うメール、チャット――。ご存じの通り、IT現場ではさまざまな文章をやり取りする。業務を進める上で、文章は切っても切れない存在といえる。

 文章が目的通りに相手に伝わるかどうかで、業務の生産性は大きく変わる。内容が正しく伝わらなければ、誤解が生じて手戻りの原因となる。内容が正しく伝わったとしても、意図に反して相手の心情を害することもある。例えば、チームリーダーが進捗が遅れていることへの危機感を訴えるメールをメンバーに送った結果、「さらに無理をしろというのか」と反発を招いてしまうようなケースだ。これも生産性を大きく低下させる。

 もっとも、IT現場で分かりやすい文章を書くのは簡単ではないとも思える。専門性が高い最新の技術やトレンドを、関係者のリテラシーに合わせて分かりやすく表現する必要があるからだ。さらに「相手の気持ちをくんで文章を書こう」などと要求されようものなら、手が止まってしまう方もいるのではないだろうか。

写真●NTTデータの木村洋平氏(第二金融事業本部 e-ビジネス事業部 法人e-ビジネス統括部 法人第四e-ビジネス開発担当 課長)
写真●NTTデータの木村洋平氏(第二金融事業本部 e-ビジネス事業部 法人e-ビジネス統括部 法人第四e-ビジネス開発担当 課長)
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 では、そんな難しさを克服し、仕事がはかどる文章を書けるようになるには、まず何をすればよいのだろうか。

 そんなことを考えていたところ、最近の取材でヒントを得られた。NTTデータの木村洋平氏(第二金融事業本部 e-ビジネス事業部 法人e-ビジネス統括部 法人第四e-ビジネス開発担当 課長、写真)と面会したときのことである。木村氏がチームメンバーのモチベーションを高めるために送ったメールの文章の一部を取材で見せてもらい、大いに参考になると筆者は思ったのだ。

目的達成に必要な要素ごとに段落を構成する

 木村氏らのチームは、全国約100社の金融機関向けのSaaSの開発・運用を手掛ける。従来システムが老朽化したため、抜本的に刷新することになった。新システムの開発に当たり、木村氏らのチームは中国、インドを含む4拠点に分散してプロジェクトを進めることにした。