言論の自由が保障された日本国に住んでいるが、日経ソフトウエア編集部に所属している以上、なかなか言えないことが1つある。それは「安易に職業プログラマにはならない方がよい」という意見だ。

 日経ソフトウエアはプログラミングの面白さを伝え、プログラマを応援するのが使命の雑誌なので、これは言ってはいけない。それどころか、「プログラマはとても面白く、やりがいのあるすばらしい職業だ」と普段は言うようにしている。ちょっといやらしい?

 しかしつい先日、とあるコンピュータ専門学校からプログラマという職業をテーマにした講演依頼があったときは、少し考えてしまった。講演相手は進路に悩む高校生や専門学校の在校生だ。未成年者も多いであろう。となると、「プログラマほど素敵な商売はない」などと言って煽ったりするのは、一人の大人として無責任であるように思われた。やはり、職業プログラマになることの考えられるリスクもちゃんと伝えなければならない。

 大きなリスクは2つあると考える。1つは「過小評価されるリスク」だ。企業の情報システムを開発する日本のIT企業に入社した場合、プログラマはその専門性の高さの割には地位、収入ともに過小評価される可能性が高い。

 プログラミングは“下流工程”で、プログラマは設計書に従って実装するだけの仕事。地位と収入を上げるには、さっさとプログラマを卒業して、SEのような“上流工程”の職種へ“ステップアップ”するしかない…。このような世界では、プログラマは幸せになれないだろう。

 もっとも、このリスクは、現時点ではWeb系やゲーム系の企業に職を求めれば回避できる。実は、もう1つのリスクの方が深刻だと考えている。それは「職業プログラマの需要が激減するリスク」である。