「どれだけ売り上げているのか分かりづらい。数字で示してほしい」。

 日立製作所で成長の柱とされる事業が、1年にわたって、アナリストや投資家からこのように指摘され続けていた。全体の売上高約9兆円の相当な割合を占める事業の規模が、明らかにされていなかったためだ。

 指摘されてきたのは「Lumada」事業である。Lumadaは、日立が強みとする鉄道や電力などの分野のOT(オペレーショナルテクノロジー)と企業内の情報システムであるITを組み合わせて、顧客の課題を解決する製品・サービス群。総称して日立はLumadaを「IoT(インターネット・オブ・シングズ)プラットフォーム」と呼んでいる。

 日立はLumadaを顧客企業に提供し、デジタルの新領域での事業を伸ばす後押しをする。顧客企業がLumadaを使えば、機器の故障予兆診断サービスを実現したり、AI(人工知能)を活用したマーケティング力の強化を図ったりできるという。

 そのLumada事業の売上高が9000億円と明らかになったのは2017年5月の決算会見のことだ。Lumadaが発表された2016年5月から1年が経過していた。筆者もこの1年間、Lumadaの事業規模を示してほしいと感じていた。

 日立がLumada事業の売上高算出のために費やした期間は4~5カ月。全社が手掛ける案件を全て精査し、IoTの活用で顧客の課題を解決した案件を調べていく必要があったため、時間がかかったという。売上高の算出に携わった、システム&サービスビジネス統括本部の小田原宏明サービス&プラットフォーム戦略企画本部長は「初めてのこともあり、難しい作業だった」と振り返る。

Lumada事業は二つある

 明らかになったLumada事業の内訳を見てみると、疑問に思う点があった。9000億円は「Lumadaコア事業」と「Lumada SI事業」という二つの事業に分かれている。なぜ二つに分かれているのだろうか。

日立製作所が2017年5月に発表した決算会見資料ではLumada事業を二つに分けている
日立製作所が2017年5月に発表した決算会見資料ではLumada事業を二つに分けている
出所:日立製作所
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 さらに疑問に思った点があった。Lumada SI事業の売上高は2016年度から2017年度にかけて200億円減って7600億円。全社の成長を担う事業なのに減収なのはなぜだろうか。

 一方のLumadaコア事業の売上高は増える見通しだ。2016年度の1200億円から2017年度には1900億円となる計画だ。