ついにマイナンバー制度の情報連携と、マイナポータルの試行運用が、7月18日に始まった。情報連携を担うのは、国の機関や自治体が個別に保有している住民個人情報を連携させる「情報提供ネットワークシステム」である。制度としては試行運用だが、マイナンバー制度の基盤を支えるシステムとしては本格稼働したことになる。もうひとつのマイナポータルは、住民が自身の登録情報や情報連携の履歴を確認できるインターネット上のサイトであり、正式な名称は「情報提供等記録開示システム」という。

 「ついに」と書いたが、各種メディアでの扱いはこじんまりとしたものだ。2015年秋にマイナンバーの通知カードの発送が始まったときや、2016年初めにマイナンバーカードの交付が始まったときは、テレビなどでも盛んに報道されたが、今回は総じてひっそりとしている。

 通知カードは全国民に配布されたし、マイナンバーカードは申請が必要だが実体があるカードとして誰でも入手できる。メディアの関心も高く、国民の注目度は高まった。マイナンバーカードの普及を促進するために、政府も予算を確保してマスメディアを通じた広報活動を展開した。

 一方、情報提供ネットワークシステムは行政事務用のバックオフィスシステムであり、運用担当者以外の目に触れることはない。

 誰でもアクセスできるマイナポータルは、2017年1月にアカウントの開設が可能になったものの、設定が煩雑で不評を買った。今回の試行運用開始に伴い、子育て関連のサービス検索やプッシュ型のお知らせ機能が利用できるようになったが、現時点ではサイトURLの特別な周知活動は行われていない。

 まずは、そろりと動き出した格好だ。

 試行運用期間は、行政職員がシステムの操作に習熟したり、システムの安定運用を確認したりするために設けられたもので、約3カ月間を予定している。試行運用期間中は、役所の窓口手続きではこれまで通り住民票の写しや課税証明書を提出する必要がある。従来の書類による処理とシステムによる情報連携を並行して実施し、情報連携で不具合が発生しても窓口処理が滞らないようにしている。本格運用開始後は、住民票の写しなどの提出が不要になり、マイナンバーに基づく情報連携だけで手続きが進むようになる。

 制度を所管する高市早苗総務大臣・マイナンバー制度担当大臣は、18日午前の記者会見で「8時から9時までに情報連携が完了したものについて、順調に推移しているとのことで、特に障害の報告もございません」と発言。行政窓口での多少の混乱は避けられないだろうが、今のところシステム面で大きな不具合の報告はなく、まずは無難に静かに滑り出したと言えそうだ。