「情報流出した基礎年金番号は、2015年9月から新しい番号に変更します――」。

 日本年金機構が、年金情報流出問題に際して2015年6月に公表した対策を聞いて、私はあれ?と意外に思った。基礎年金番号って、他人に見せてはならない「秘密の番号」だったっけ、と。

 実はこの点に、2015年10月から配布されるマイナンバーの運用にも関わる、年金情報流出問題が明らかにした課題が隠されている。

見える番号なのに、秘密にすべき?

 公的機関や民間企業が個人に割り振る番号の中には、一部の人や企業と番号を共有する「見える番号」でありながら、むやみに公表するのが望ましくない「秘密の番号」とみなされているという、相矛盾した性質を持つものがある。

 例えばクレジットカード番号は、氏名、有効期限と共に人の手に渡れば、通販サイトによってはカードの持ち主になりすまして買い物ができてしまう。カードを紛失して再発行する際は、新しい番号が割り当てられる。

 クレジットカード番号は、個人を一意に特定するIDであると共に、個人がカードの契約者である事を示す、秘密の認証情報でもあるわけだ。秘密の番号にもかかわらず、ショッピングを通じて広く企業に番号を引き渡す必要があるため、漏洩によるなりすましの被害が後を絶たないようだ。

 一方で学籍番号や社員番号は、漏洩した際に「変えてくれ」と言う人は少ないと思う。それ自体に個人を特定するIDとしての役割はあっても、その番号を知る人を本人と認める認証手段ではない。

 このほか運転免許証番号も、「秘密の番号」とは見なされていない。例え免許証を紛失した場合にも、最後の1桁を除いて同一の番号が割り当てられる。

 私はてっきり、基礎年金番号も「秘密の番号」ではないと考えていた。実際、年金手帳を紛失・再発行しても、基礎年金番号が変更になるわけではない。