海外ベンダー主催の年次イベントでは、新たな戦略、製品が派手に演出され、自社の優位性をこれでもかとアピールしてくる。現地会場のパイプ椅子に身を沈め「これは確かに斬新」「うーん、他社の後追い」「この戦略ではパートナーはついてこない」と、ひとりごちるのが好きだ。米IBMや米VMware、米Oracleや米EMCなど、こうした取材はこの10年で15回を数える。とりわけ印象に残るのが、2年前に初参加したAWS(Amazon Web Services)のイベント「AWS re:Invent 2015」だ。

写真1●AWS re:Invent 2015の基調講演に登壇した、米Amazon.com CTO(最高技術責任者)のバーナー・ボーガス氏
写真1●AWS re:Invent 2015の基調講演に登壇した、米Amazon.com CTO(最高技術責任者)のバーナー・ボーガス氏
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 この年のre:Inventでは、IoT(Internet of Things)の活用に向けた「AWS IoT」や、専用レンタルストレージ「AWS Import/Export Snowball」などが発表された。多くの新サービスの中で「このサービス、まずくないか」と感じたのが、BIサービス「Amazon QuickSight」だった。AWSが自らBIサービスの提供に乗り出した結果、BIツールの提供パートナーと“ぶつかる”と感じたからだ。

 つい先日、AWSがイノベーションを加速し、パートナーの既得権益をおびやかすという趣旨の記事を公開した。

 この記事は一朝一夕に出きたわけではなく、2年前のre:Inventの会場で覚えた違和感が起点になっていた。

日本でも「サーバーレスアーキテクチャー」が本格化

 アマゾン ウェブ サービス ジャパンも「AWS Summit Tokyo」と呼ぶ年次イベントを行っている。5月末から4日間にわたって開催された今年も多くの来場者を集めた。AWS Summit Tokyoでは基本的に、新たな発表はない。今年の「大阪リージョン開設の発表」は例外で、いわゆる地方興行という位置づけのイベントで興味深いのは、国内企業のAWS利用動向だ。

 今年も数十社がAWSの利用事例をプレゼンした。その中で目立ったのが「サーバーレスアーキテクチャー」の採用だ。イベント駆動型コード実行サービス「AWS Lambda」を使えば、ユーザーはサーバーを準備することなくアプリケーションを実行できる。

 「サーバーが無いに越したことはない(No Server is Easier To Manage Than No Server)」。米Amazon.comでCTO(最高技術責任者)を務めるバーナー・ボーガス氏がLambdaの優位性を訴えたのも、2年前のre:Inventだった。