「クラウドを活用するなら、(ユーザー企業が自ら)あちこちにアンテナを張って情報収集する必要がある。従来のように、ITベンダーからの情報を待つ姿勢ではクラウドを使いこなせない」――。大手企業の情報システム子会社でマネジャーを務めるA氏から聞いた言葉だ。A氏はパブリッククラウドの利用拡大に向けて、複数事業者のサービス比較を進めている最中。クラウドの利点を生かした柔軟で安価なシステムを実現するには、意識を変えなければならないと実感しているという。

 こうした話は、ユーザー企業にクラウドの取材をしているとしばしば耳にする。特に、製品・サービスの情報収集で、クラウドは勝手が違うという。

 例えばクラウドサービスを選定する際の比較表作成について、「日ごろ付き合いのあるITベンダーから十分な情報を得られない」と、ある大手製造業のシステム部員はこぼす。であれば、労を惜しまず自ら情報を集めて比較表を作ればいいのだが、サービスの変化があまりに激しいので、それを使って検討しているうちに情報が古くなってしまう。

 費用の見積もりも、一筋縄ではいかない。クラウドの料金は、システム構成のちょっとした違いで大きく変わる。「データをどこからどこに出し入れするかといった運用方法まで勘案して細かく見積もらなくてはならない」(前出の大手製造業のシステム部員)。実際、カタログ上ではほぼ同額に思えた2社のクラウドサービスを、自社で細かい条件まで加味して見積もったところ、大差が付いたケースがあったという。

 クラウドに商用ソフトウエアを持ち込んで利用するなら、利用条件の確認やライセンス費用の見積もりも必要だ。クラウド上のシステム構成によってライセンス費用は大きく変わるが、ライセンス体系は多くの場合複雑で分かりにくい(関連記事:クラウド時代で変わった、MSライセンスの買い方)。商用ソフトウエアによっては、クラウド上での稼働を想定したライセンス体系が未整備のケースがある。ある金融系企業は、クラウドで商用ソフトウエアを利用するに当たって、その開発元と個別交渉を重ねる羽目になったという。

新機能のリリースが公式発表されないケースも

 クラウドの導入後も、継続的な情報収集が欠かせない。新サービスが次々と登場し、料金体系も変化していく。その情報をキャッチアップするために、クラウド事業者の公式ブログを日々ウオッチしているユーザー企業もある。

 そこまでしても、キャッチアップできるとは限らない。サービスの変更などが公式に発表されないケースがあるからだ。冒頭のA氏は「クラウドサービスを使っていて、いつの間にか新機能が加わったことに気付き、代理店に問い合わせたら、その担当者も知らなかった。調べてもらったところ、先月からその機能が使えるようになっていたことが判明した」と話す。

 これ以外にも、クラウドを導入し使いこなす上でユーザー企業が気を配るべきポイントは様々あるだろう。ユーザー企業からクラウド導入の相談を受けたり、クラウドを使った新システムの提案を求められたりするITベンダーも、置かれている状況は同じだ。

 クラウドを導入したり活用を進めたりする上で、どんな不満があるのか。言い換えると、何が課題になり、どんな情報が求められるのか。ITproでは、それを調べるアンケートを実施している。ぜひ、ご意見をお寄せいただきたい。