日経コミュニケーションでは7月号(7月1日発行)で「光コラボの通信簿」と題した特集を掲載した。光コラボとは、NTT東西が2015年2月に開始した光回線の卸提供サービス「光コラボレーションモデル」のこと。これにより、様々な企業が独自ブランドで光回線サービスを展開できるようになった。NTT東西は当初、異業種の参入を促して新サービスの創出につなげると意気込んでいたが、その後どうだったのか。特集では開始から1年以上が経過したタイミングで検証したわけだ。

 「通信簿」のタイトルに合わせて結論を先に紹介すると、「もうすこしがんばりましょう」という評価になる。光コラボの参入企業は2016年3月末時点でNTT東日本が約300社、NTT西日本が約260社。NTT東西における重複を除くと、約350社に達する。この数字だけを見ると急速に拡大した印象を受けるが、異業種ではサービス未提供の参入企業も少なくない。

 調査会社のMM総研によると、光コラボの契約数シェアは、NTTドコモとソフトバンクの携帯電話大手2社だけで約6割を占める。大手ISP(インターネットサービスプロバイダー)などを含めた上位10社で約9割に達するという。異業種の参入促進で新サービスの創出につながったとは、とても言い難い状況だ。以下では、光コラボの現状を総括したい。

説明や確認が多くて手続きが複雑

 異業種の参入を難しくしているのは、光回線事業の複雑さ。参入に当たってはNTT東西との各種手続きだけでなく、電気通信事業者の登録やISPをはじめとした各種サービス事業者との交渉が必要になる()。

図●光回線事業への参入に必要な手続き
図●光回線事業への参入に必要な手続き
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 販売や営業の体制を整備するのも容易ではない。「顧客にサービスの内容を説明して契約を締結するだけ」と安易に考えがちだが、本人性や提供エリアの確認、重要事項の説明、工事日の調整といったプロセスが必ず入る。一般に光回線の手続きには新規契約で30~40分かかるとされ、オプション契約や自社商品/サービスの説明も加わると、さらに長くなる。現場にここまでの時間を割けないという企業は多いだろう。

 参入企業は光回線サービスの提供主体となるため、サポートの窓口も用意する必要がある。問い合わせの多くは「インターネットにつながらない」といった曖昧な内容になるため、自社商品/サービスのサポート窓口では対応できない可能性が高い。問題の原因を切り分けて適切に対処できる専門スタッフが不可欠になる。

 このほか、料金請求・回収も一筋縄でいかず、細かく調べると、異業種には実に参入障壁が高いと感じる。NTT東西はこうした課題を緩和するため、様々な業務受託メニューを用意するが、外部への委託を増やせば当然、利幅が薄くなってしまう。契約数の獲得目標を高めに設定せざるを得なくなる。契約数シェアが携帯電話大手2社や大手ISPに集中するのも当然の帰結と言える。