「ICT(情報通信技術)による経営革新が急務だ。注目しているのはIoT(インターネット・オブ・シングズ)やAI(人工知能)、ドローンの活用。これらデジタル技術を生かして、新規事業の創出に取り組む」

 企業の経営トップから、こうした言動を見聞きする機会が増えてきた。社内業務の効率化や合理化にとどまらず、企業の本業そのものをITで支援する。あるいはITを活用した新しい製品やサービスを生み出す。攻めのIT、デジタルビジネスなど、呼び方は様々だが、目指すところはおおむね共通しているように思う。

 こうした動きそのものは、記者も心強く感じている。ITは道具であり、生かすも殺すも使い手次第。コスト削減だけでなく本業の競争力強化に使ってこその道具であると考えているからだ。

 ただ、気がかりなこともある。ITによる経営を推進するに十分な質と量の人材を手当てする必要があることを、経営トップがちゃんと認識しているのか、ということだ。

IT人材、EUは半数超が非IT企業に、日本は2割

 IT現場の人手不足感は高まっている。

 情報処理推進機構(IPA)の「IT人材白書2016」によれば、ユーザー企業のIT人材の量について、2015年に「大幅に不足している」と回答した割合は20.5%、「やや不足している」は63.7%、合わせて8割台半ばの企業が不足していると感じていた。それ以前の2年間はそれぞれ7割台だった。

 IT人材の所属企業の内訳に関しても、ユーザー企業における人材不足をうかがわせる結果が出ている。IT人材白書2016では、IT企業とそれ以外の企業に所属するIT人材の割合を、欧州連合(EU)と日本で比較した。

 EU全体では半数超の人材がユーザー企業(IT企業以外)に所属しているのに対して、日本はユーザー企業に所属する割合は2割台だった。国別にみるとドイツは6割以上がユーザー企業に所属している。官民を挙げて「インダストリー4.0」に取り組むドイツを意識する日本企業は少なくないが、少なくともその重要な担い手であるはずのIT人材の量では、日本は後れを取っていると言わざるを得ない。IPAは数年前に日本と米国に関する同様な調査結果も発表しており、米国はユーザー企業に在籍する割合が7割だった。