クラウドを導入したユーザー企業への取材で、欠かせないテーマがコストだ。パブリッククラウドの場合、オンプレミス(自社所有)環境と比べて初期投資額が抑えやすく、空調設備などを自前で整える必要も無い。

 だからといってクラウドを使えばコストが下がるというのは早計だ。旭硝子の浅沼勉情報システム部デジタル・イノベーショングループマネージャーは、「クラウドを使うと単純にコストが下がるというのは間違い」と警鐘を鳴らす。

 同氏は「クラウドにはコストを最適化する手段が豊富にあるというのが正しい。特に基幹システムは無駄を省ける余地が多い」と話す。クラウドだと導入後でも仮想マシンのスペックをすぐに変更できる。必要ないときは仮想マシンを停止すれば、利用料金は発生しない。それだけに、導入後も適切に利用できているかを定期的に見直すことが欠かせない。

三段階で見直しを実施

 例えば基幹システムをオンプレミス環境からクラウドに移行する場合、利用する仮想マシンのコストは大きく三つの段階で見直しを実施するとよい。

 第一は移行時だ。多数ある仮想マシンのインスタンスタイプから、CPU性能やメモリー容量を含めていかに適切なものを選択するかは最初の壁となる。ユーザー企業の多くが、「まずはオンプレミス環境で利用していたサーバーのスペックを基準に選ぶ」と語る。

 ただし、これはあくまでも暫定的な対処だ。あるユーザーは「オンプレミスのスペックは約5年先を見越したものだったため、同じスペックのままクラウドに移行すると割高になる」と話す。問題無く稼働するからといってそこで終わらせず、無駄の無いスペックに調整する必要がある。

 一方、オンプレミスと同等のスペックにすると、クラウドだと想定通りの性能が出ない場合がある。性能不足の原因を精査せずにCPU性能やメモリー容量を上げたり、インスタンスを増やしたりすると、余計なコスト増を引き起こしかねない。

 例えばI/O性能がボトルネックになっているのであれば、ストレージをHDDからSSDに変更するのも手だ。ディスク構成も重要になる。あるユーザーは「開発機や検証機で個別にSSDを配置するよりも、大容量のSSDを共有する構成にすることで性能不足が解消できた」と語る。