総務省は2015年6月に電気通信業の個人情報ガイドラインの見直しを発表した。裁判所の令状があれば、捜査機関がスマートフォンなどのユーザーに知られずに全地球測位システム(GPS)を利用して位置情報を収集できるようにした。通信事業者やメーカーは、ユーザーが知らぬ間に捜査機関がGPSの位置情報を取得できるようにする必要がある。米国と同様に、安全保障とプライバシー保護のバランスを議論する必要がありそうだ。

 ガイドラインの見直しは、犯罪捜査でスマホのGPSから取得した位置情報を使いやすくするためだ。GPSを利用すれば、高い精度でユーザーの現在地が分かる。実は総務省は2011年にも、スマホのGPS情報を犯罪捜査に活用できるようにガイドラインを見直していた。

 その際には、裁判所の令状に加えて、位置情報が取得されていることをユーザーが分かるようにするという条件を付けた。もともと国内の携帯電話には、GPSで位置情報を取得すると、画面に「現在地を確認中」という表示が出たり鳴動する機能が搭載されている。

 そのため、スマホのGPSの位置情報を利用すると、捜査対象者に位置情報が取得されていることが知られて捜査に活用しにくい。捜査のための「通信傍受」や「通信履歴の利用」などと比べても、捜査機関が情報を利用する場合の手続き要件が過重だったという。総務省は「裁判官の発付した令状に従う必要があり、司法手続が適正になされている限り、利用者のプライバシーを不当に侵害することにはならない」としている。

 しかし、新たなガイドラインに対応した仕組みを運用するには、通信事業者やメーカーがシステムを変えなければならないとみられる。それによって犯罪とは無関係のユーザーの端末も含め、あらかじめ位置情報を取得しても表示や鳴動をしないようにする必要がある。