改正組織犯罪処罰法や獣医学部の新設を巡る問題で終盤国会が混乱したあおりを受けてほとんど報道されなかったが、2017年5月30日に新しい国家IT戦略が閣議決定された。同戦略に記載された項目の一部は新しい成長戦略である「未来投資戦略2017」、および2018年度の政府予算編成の基になる「骨太の方針(経済財政運営と改革の基本方針2017)」にも盛り込まれ、6月9日に閣議決定された。

 今後の政府や自治体の電子行政の方向性を指し示す主要な項目をピックアップしておこう。

 国家IT戦略は、2013年から2016年まで「世界最先端IT国家創造宣言」の名称で策定されてきたが、今回4年ぶりに変更があった。新しい名称は「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」である。2016年12月施行の「官民データ活用推進基本法」で規定された「官民データ活用推進基本計画」と一体化された。

 実は、国家IT戦略を策定する「IT総合戦略本部」と、官民データ活用推進基本計画を策定する「官民データ活用推進戦略会議」は、メンバーが完全に同じである。本部長・議長は首相が務め、副本部長・副議長はIT政策担当大臣・内閣官房長官・総務大臣・経済産業大臣が務める。

 本部員・議員も、ほかの全大臣と内閣情報通信政策監(政府CIO)であり、10人の有識者メンバーも全員が共通している。官民データ活用推進戦略会議の発足後、過去2回の会合はいずれもIT総合戦略本部との合同会議として開催されており、世界最先端IT国家創造宣言と官民データ活用推進基本計画との一体化は、基本法の法案提出時からの既定路線だったと言える。

データに基づく政策立案を推進する専門官を省庁に配置

 新しい「世界最先端IT国家創造宣言・官民データ活用推進基本計画」は2部構成であり、第1部の「総論」と、第2部の「官民データ活用推進基本計画」からなる。重点8分野(電子行政、健康・医療・介護、観光、金融、農林水産、ものづくり、インフラ・防災・減災等、移動)の施策集や、各施策と基本法の条文との対応表も付属している。