米アマゾン・ウェブ・サービスと米グーグルが企業向けシステム市場で「大人」になった。クラウド活用は今まさに転換点を迎えている――。

 両社のそれぞれの日本法人が2017年6月に相次ぎ開催した年次イベントに参加して、記者はそう感じた。6~7月にかけては例年、外資系を中心に大手IT企業の大規模なイベントが日本で開催される。両社もここ数年、この時期にイベントを開催している。

 イベントには米国本社から“大物”がやって来る。その1人が2017年6月14日、グーグルの企業向けクラウドサービスのイベント「Google Cloud Next '17 in Tokyo」の初日の基調講演に登壇した。Google Cloud シニアバイスプレジデントのダイアン・グリーン氏だ。グリーン氏と言えば米ヴイエムウェアの共同創業者兼CEO(最高経営責任者)と記憶している人も多いのではないだろうか。

 クラウドサービスの責任者として初来日したグリーン氏は日本市場について、「働き方改革に注力している点が他の市場に比べてとてもユニークだ」と切り出した。「日本企業は人工知能(AI)などを使って全ての人の生産性を上げようとしている。本当に野心的なビジョンを持っている」(グリーン氏)。

ファミマ社長がグーグルイベントに半日費やす

 Google Cloud Nextでは、同社サービスの代表的な導入事例としてファミリーマートが登場した。驚いたのは、ファミマの澤田貴司社長自らが登壇し、自社の取り組みを説明したことだ。

Google Cloud Next '17 in Tokyoの基調講演に登壇したファミリーマートの澤田貴司社長
Google Cloud Next '17 in Tokyoの基調講演に登壇したファミリーマートの澤田貴司社長
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 澤田社長はグーグルと現在進めている働き方改革について説明。グーグルのクラウドサービスとコンサルティングの良さを「イノベーティブであること」と話し、「(まるで自分が)グーグルのセールス担当者のようだが、これからもグーグルと共に改革を進めていきたい」と強調した。

 澤田社長は基調講演後の記者会見にも登場。「米グーグルの本社に出向き、その素晴らしさに驚いた」と絶賛し、グリーン氏と握手した。日本の流通業を代表する企業の経営者が多忙を極めるなか「午前中をほぼグーグルのイベントに費やした」ことに、記者は素直に驚いた。同時にファミマの澤田社長を「半日間も自社イベントに参加させた」というグーグルの勢いを実感した。

 基調講演ではファミマに加え、任天堂やメルカリも登壇。両社とも技術的な観点の話題よりも、グーグルとのパートナーシップやコンサルティングサービスの評価の話題に多くの時間を費やした印象だった。

 初日の基調講演や記者会見に参加して実感したのは「グーグルが経営視点での改革を訴え始めた」という変化だ。昨年のグーグルのイベントの基調講演はもっと技術寄りだったのだ。新サービスを紹介したり、米アマゾン・ウェブ・サービスのクラウドサービスである「Amazon Web Services(AWS)」との処理速度を比較したりと、技術の紹介が中心だった。