「自分がやっていることがレガシーだと感じると、エンジニアのモチベーションは低下する。その点、今はアグレッシブに新しい技術に挑戦できる」(LINE 開発1センター LINE開発1室の鶴原翔夢氏、同センター LINEサーバー開発室 LINEの小野侑一氏)――。マイクロサービスについての取材中、2人のエンジニアから飛び出した言葉にはっとした。

画面●マーチン・ファウラー氏らのブログ記事「Microservices」
画面●マーチン・ファウラー氏らのブログ記事「Microservices」
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 マイクロサービスとは、最近話題を集めるソフトウエアのアーキテクチャーである。コンシューマー向けのネットサービスやモバイルアプリを手掛ける企業を中心に取り組みが進んでいる。米国のソフトウエア企業、ソートワークスのチーフサイエンティストを務めるマーチン・ファウラーらが2014年に公開したブログ記事「Microservices」で広く知られるようになった(画面)。

 記者は、『日経コンピュータ』2015年6月25日号でマイクロサービスをテーマにした特集を担当した。クックパッドやGunosy、LINEなど国内の代表的なネット企業に取材にお邪魔する中で出会ったのが、冒頭の言葉だ。こうした企業の強さの秘訣が、この一言に凝縮されているような気がした。

機敏さを保つために必要なアーキテクチャー

 マイクロサービスでは、一つのアプリケーションを独立した複数のサービスの組み合わせで構築する。各サービスは独立したプログラムとして動作し、サービス同士はWeb APIなどによってゆるやかにつながっている。例えば現在のクックパッドやLINEは、数十のサービスの組み合わせで成り立っているという。LINEの場合、友人へのメッセージ送信、音声通話、企業などが開設する公式アカウントなどはいずれも内部的には独立したサービスとして開発されている。