岐阜県長良川の伝統文化である「鵜(う)飼い」。言うまでもなく、鵜匠が鵜を操って鮎などを捕らせる伝統的な漁法だが、鵜はなぜ鮎を食べてしまわないのか。それは、「首結い」と呼ばれるひもを鵜の首に結び、大きい魚を飲み込めないようにしているからだ。面白いのは、小さい魚はちゃんと鵜が食べられるようにしているところ。人と鵜がうまく利益を分け合っているわけだ。ただし、鵜にとって心地よい首結いの結び方があるそうで、その巧拙で漁獲量が左右されるという。
鵜匠と鵜のように、行政と民間企業ももっとうまく利益を分け合えるのではないか。最近、そんなことを考えている。
新経連が行政に政策提言
官公庁や地方自治体の電子行政サービスは使いづらい――。こんな声を耳にすることは少なくない。新経済連盟で政策提言に携わる春日奈美子氏は、「(サイト内で)自分がやりたい行政手続きすら見つけにくい」と語る。UI/UXがサービスの成否を分ける時代だ。行政サービスも使いやすくあってしかるべきだろう。
2017年5月12日、新経連は経済再生担当大臣などに宛てて一つの政策提言を提出した。テーマは「行政におけるデジタルファースト」。ただし提言書には「電子行政サービスのUI/UXを向上させよ」といった内容は出てこない。
新経連が求めるのは、民間企業が利用しやすい「行政API(アプリケーション・プログラミング・インタフェース)」の提供だ。「行政サービスそのものの使いやすさは求めない」と、春日氏は言う。行政自身の手で電子行政サービスの使い勝手を高めるよりも、APIを使って民間企業が関連サービスを開発したほうが近道だと、産業界は考えているのだ。