長野県に住んでいる私の伯父は80代後半だが、とてもエネルギッシュに日々の暮らしを楽しんでいる。毎日プールに通い、週に1度はサークルで合唱を楽しみ、私たちが訪ねるといえば、近くの山に出向いて山菜を摘んで来てくれる。

 伯父のアクティブな日常になくてはならないのがクルマ。住まいはかなりの山奥にあり、バスは1日数本。電車の駅までも遠い。それでもクルマを運転できれば、自分の行きたいところに、行きたいときに出掛けられる。

 とはいえ、高齢者の運転に家族の心配は尽きない。家族からは折に触れ、免許の返納を勧められるが、今のところかわしているようだ。

 自分でクルマを運転できなくなったら伯父の生活は大きく変わってしまう。子供たちは皆仕事を抱え、毎日プールに送迎するのはまず無理だ。タクシーは市内に数台しかないうえ、コストもかかる。家族は交通事故のリスクを案じながらも、免許返納すれば、伯父がこれまでの「イキイキライフ」を失うのではないかと危惧している。

 高齢ドライバーによる交通事故が増加するなか、自治体は免許の自主返納を奨励している。自主返納したドライバーに対して、タクシーやバス料金の割引、買い物の宅配サービスなどの優遇策を提供している自治体も多い。とはいえ、免許返納によって行動の自由度が下がるのはいかんともしがたい。

 この課題を解決する1つの方策となりそうなのが、2016年5月27日に京都府京丹後市で始まった自家用車による有償輸送サービス「ささえ合い交通」だ。Uber(ウーバー)Japan(東京・渋谷)が提供するスマホアプリなどのICTシステムを活用する。