PMO(Project Management Office)の存在意義が問われている。PMOは一般に、各プロジェクトの運営事務局や、社内標準の整備、トラブル対応、人材育成などの役割を担う。ところがPMOに所属するスタッフの現場感の欠如や、経営層に近い立場からくる傲慢さが目立ち、現場の反発を招くケースが少なくない。

世間では“PMO設置ラッシュ”

 ITベンダーやユーザー企業のPMO設置率は定かではないが、トラブルプロジェクトが急増した2000年代に、中堅以上のITベンダーのほとんどがPMOを設置した。大手ベンダーでは百人規模の全社PMOと、業種に分かれた事業部単位のPMOを設置している。

 一方、デジタルビジネスの拡大でITプロジェクトが増加するユーザー企業でも、PMOの設置が相次いでいる。ユーザー企業では本来、システム部門がその役割を担うべきかもしれないが、経営に直結する意思決定が多いことから、社長や役員直属、経営企画に相当する位置付けで組織化されるケースが多いようだ。世間ではまさに“PMO設置ラッシュ”と言っていい。

 そんなPMOが、現場の反発を招いている。例えばある大手IT企業でプロジェクトマネジャーを務める相澤大輔氏(仮名、44歳)はこう憤る。「まるで“役所仕事”だ。PMOは現場感覚のないルールばかり作って押し付ける。何かといえば全体最適。人手不足の中でPMO向けの社内資料作りに追われている。PMOは現場の生産性や品質の向上を推進するはず。それなのに現場の足ばかり引っ張っているとしか思えない」。とても厳しい見方だ。

 これに対して別の企業のPMOでリーダーを務める佐藤智之氏(仮名、48歳)に話を聞くと、こちらも現場の対応にいら立っていた。「プロジェクトの失敗を減らすために日々頑張っているのに、現場は反論ばかりして言うことを聞いてくれない。自分たちのことしか考えていない現場に『もっと大人になれ』と言いたい」(佐藤氏)。現場との距離感に、頭を抱えているようだ。