「企業IT動向調査」という調査をご存知だろうか。日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)が企画・実施している調査で、クラウドやビッグデータなどの活用状況やセキュリティ対策の実態、IT予算やIT戦略の推進体制などをまとめている(関連サイト)。毎年春になると報告書が発行されるので、筆者は調査研究の参考にして、研修・講演のネタ元として活用している。

 新年度の慌ただしさがなくなるこの時期になると、IT投資・活用動向をテーマにした研修や講演の依頼が増えてくる。その際にいつも感じるのは、ユーザー企業の実態を知らないITベンダーの営業担当者や技術者が多いことだ。IT部門やシステム子会社での研修では、他社の状況を知らないまま自社のIT投資計画などを立案しているケースに遭遇することもある。こうした背景がある上での研修・講演になるので、「企業IT動向調査」に関連する内容は私の“鉄板ネタ”でもある。

 研修・講演では調査結果を示すものの、「数字を覚えることが重要ではない」と伝えている。「顧客の実態を知れるデータは、書店やネットで手軽に入手できる。ちょっとした手間をかけるだけで、顧客との会話や提案のレベルが一段上になる。顧客(IT部門であればユーザー部門)に喜ばれるIT活用を提案するためにも、まずは情報収集の習慣をつけよう」といったことを強調している。

 今回、この枠(記者の眼)で記事を書く機会を得られたので、研修・講演などでいつも紹介する「企業IT動向調査報告書2016」の中から、定番ネタである三つのデータを紹介しよう。

定説「売上高の1%」を信じてはいけない

 IT部門やシステム子会社であれば、自社のIT予算は他社に比べて高いのか低いのかを知りたいもの。ITベンダーであれば、顧客の懐事情のアタリを付けておきたいものだ。IT予算については、昔から「売上高の1%」という定説がある。だが、金融機関を除けば、売上高の1%に達する潤沢なIT予算を持っているところはほとんどない。