IoT(Internet of Things)ブームが来ている。「FinTech」や「AI(人工知能)」のように、新聞でもIoTの文字を頻繁に目にする。IoTは、ITベンダーだけではなく、ITを活用する側にとってもこれから数年、大きなインパクトを与えるキーワードであることは間違いない。

 どの程度の盛り上がりなのか、プレスリリース検索サイトを使って調べてみた。すると2016年に入って約半年で、IoT関連の製品/サービスに関するプレスリリースは約180あった。営業日ベースで1日1.3本、IoT関連のプレスリリースが登場している換算になる。試しに「フィンテック/FinTech」を同じ期間で調べてみると、該当するプレスリリースは約50。IoTの盛り上がりは相当なものといえそうだ。

 記者もブームに乗ってみようと2016年に入り、IoT分野を集中的に取材している。ところがIoT製品/サービスを提供しているITベンダーに取材した際に「あれ、おかしい」と思うことが増えてきた。

 IoTに関連するプレスリリースを出しているITベンダーに取材に行くものの、「IoT関連の製品/サービスに注力するぞ」という強いメッセージや意欲を持った企業に、なかなか出会わないのだ。

 製品やサービスの販売目標やターゲットについて尋ねると、「当社の製品やサービスがIoTに生きるはずだ」「当社のこれまでの知見が、IoTにも活用できるのではないかと考えている」「IoTに役立ちそうなサービスなので、これから用途を見極めていきたい」といった具合の回答で、全般的に歯切れが悪い。

大きなビジネスチャンスに対して遠慮がちに

 企業がIoTを活用して新たなサービスを開発したり、業務に生かしたりするために、情報システムは必須だ。モノが取得したデータをインターネットを使って他のモノや人と接続し、新たな価値を生み出す仕組みがIoTだ。IoTそのものが情報システムの一部であり、情報システムなくしてIoTは成り立たない。

 これまで企業向けシステムを手がけてきたITベンダーにとって、IoTは大きなビジネスチャンスなのは間違いない。にもかかわらず、ITベンダーは何となく遠慮がちにIoTのビジネスを進めている。どうしてなのかを疑問に持ち、取材を進めてみると、その理由が明らかになってきた。