「パブリッククラウドなのに、なんでこんなに高いのか」――。パブリッククラウドは安いと言われる一方で、こうした感想を聞くことがある。

 今回、パブリッククラウドのコストについて記事を執筆するために、複数のユーザー企業やITコンサルタントに話を聞いたところ、「5年間で比較すると、自社所有(オンプレミス)のシステム構築・運用コストとほぼ変わらない」といった指摘が多かった。

 そもそもパブリッククラウドは、クラウド事業者が用意したサーバーやストレージを多くのユーザーで共有してコストを安くするもの。負荷に応じて柔軟にリソースを追加できる点も、初期コストを抑えられることにつながる。

 そんなパブリッククラウドのコストが高くなる要因は、いくつかある。例えばサービスレベル。できるだけシステムが停止しないようにし、もし停止したときにはあらかじめ決めた時間内に復旧させようとする場合、冗長化構成にしたりオプションを契約したりすることでコストが積み上がる。このほか、オンプレミスと同じ構成にした結果、サーバー台数が多すぎることでもコストが高くなる。サーバー当たり数万円の高い保守サービスを契約して、月額の保守料が跳ね上がるケースもある。

パブリッククラウドを安く使う3社の工夫

 もちろん、パブリッククラウドを納得のいくコストで利用しているユーザー企業も存在する。そうした企業のシステム担当者に話を聞くと、似たようなコメントが返ってきた。それは「そのままだと高いが、工夫すれば安くなる」というもの。どの担当者も複数の工夫を組み合わせて、コスト削減に成功していた。

 コスト削減の工夫はさまざまだが、ここでは3社の例を紹介しよう。

 まずは、AWS(Amazon Web Services)に基幹システムを移行したA社の例。A社では、社内でサーバーを申請する際、独自に作成したExcelベースのコスト試算シートを活用している。必要なスペックや稼働時間を入力すると、あらかじめ設定した価格テーブルを基にコストを自動で算出する。この試算を基に、コスト削減を実現できるスペックを探っている。

 また、こまめに見直しもしている。月1回の頻度でサーバーの使用状況と実コストをモニタリングし、使われていないサーバーがないかを確認。その際、AWSのツール「Trusted Advisor」を活用している。さらにアプリケーション担当者には年1回、定期的な棚卸しも促す。もし稼働しなくてもよい時間帯があれば、その時間はサーバーを停止。また、落としてもよいスペックがあれば、サーバー構成を見直している。