「空気を読めよ」。こんな言葉で失言や失態を指摘された記憶はあるだろうか。器用だったり人好きのする性格だったりすれば、記憶にないかもしれない。筆者もときどき言われるが、あまり気にしていない。

 空気を読むべきときもある。上司や同僚と一緒にチームを組んで仕事をしているときなどは、まさにそうだ。上司の意向や同僚が望んでいることを推測してその通りに仕事をすれば、確かに評価も上がりそうだ。

 先日、アクセンチュアの立花良範 執行役員に話を聞く機会があった。顧客企業との関係について立花執行役員は、「ときには、『そんなことは望んでいない』『頼んだことをやってくれ』と嫌がられることがある」と話す。同社のコンサルタントは顧客が求めていなくても、その企業に必要だと思った場合は積極的に提案するのだという。「あなたの会社ではこれをやらなければいけないんじゃないでしょうか」といった具合だ。

 立花執行役員は次のように続ける。「顧客に言われたこと、顧客が望むことだけをやるべきではない。ときには顧客に嫌がられることも言う。これが本当のコンサルタントの在り方だ」。経営・事業戦略などに必要だと思ったポイントは率直に指摘するのが目指す姿なのだという。「我々が目指すべき姿は『御用聞き』ではない」(立花執行役員)。

 つまり、アクセンチュアのコンサルは「あえて空気を読まない」こともあるのだ。顧客が頼んでいない提案をして、ときには嫌がられる。顧客が明確に認識している課題の解決や求めている要望に応えるだけではないからだ。その結果、ときには「空気を読めよ」と思われることもあるのかもしれない。

 きれいごとのように聞こえるが、こうした姿勢は実践するのが難しい。顧客企業に疎まれることもあるからだ。「空気」に逆らって顧客に「ノー」を言い続ければ、煙たがられるだけ。いずれはベンダーとして声がかからなくなってしまう恐れすらある。

 しかし、顧客の要望に対していつも「イエス」しか言わないのでは、顧客のためにならない。顧客の経営・事業戦略において本当に解決すべき課題に気付いていないときは、「あえて空気を読まないで」指摘することも必要だ。

 「御用聞きにならない」よう「あえて空気を読まない」アクセンチュアの姿勢、ときに「空気が読めない」と思わせる姿勢は、一つの武器になっていると感じた。