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記者の眼

我々はなぜ「導入事例」を信じてしまうのか

松山 貴之=デジタル編成部 ネット事業プロデューサー 2017/05/25 ITpro

 IT業界では「ソリューション」という言葉をよく使う。筆者はこの言葉をあまり使いたくない。

 「記者の眼」は個人的な見解を書いてよいコラムなので書かせていただくが、ソリューションという言葉は、どうもピンとこない。IT企業が使うと「お任せいただければ御社の問題を解決します」という意味になるのだろうが、そもそもBtoBの商談では買い手側に何らかの問題があり、それを解決するために商品やサービスを購入する。つまり、BtoBでは問題を解決するのは当たり前だと思うのだ。

 しかし、ソリューションという言葉を使いたくなる気持ちが分からないではない。ハードウエア製品のように物理的なモノであればまだしも、ソフトウエアやサービスは目に見えず、何を売っているのかを伝えることが難しい。だから、「ソリューション」という言葉を使いたくなるのだろう。

IT業界独自のマーケティング手法

 こんな業界特性があるがゆえ、IT業界では独自のマーケティング手法が進化したという。その代表が「導入事例」だ。導入事例とは、実際に製品を導入した企業の担当者が登場する記事で、「なぜその商品を選んだのか」「導入してどうだったのか」などをまとめたもの。ITベンダーのホームページには多くの導入事例が掲載されている。

 IT業界に長くいると当たり前のように目にする「導入事例」だが、実はIT業界以外ではそんなに多くないらしい。というか、「導入事例」と言っても何のことか分からないという。

 導入事例広告などを専門に手掛けるカスタマワイズの村中明彦社長によると、「IT業界で『事例』といえば営業ツールのことだが、製造業ではヒヤリハット事例など業務改善の参考情報を指す。また、法曹界で事例研究は過去の判例の研究のこと。事例という言葉が何を指すかは業界ごとに違う」とのことだ。

 村中社長はソフトウエア会社でマーケティングを担当していたころ、鳴かず飛ばずだったBtoB商品の売り上げを、導入事例の活用で大幅に増やした経験を持つ。今では導入事例の専門会社を立ち上げ、IT業界はもちろん、IT業界以外でも導入事例の制作・監修をしている。

独自の付加価値を信用してもらう手法

 先述したように、導入事例はIT業界で特に発達した手法なので、ほかの業界ではあまりなじみがない。では相性がよくないかといえば、どうやらそうではないようだ。

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