パーク24が提供するカーシェアリングサービス「タイムズカープラス」が好調である。2009年5月にサービスを開始して以来、現在までに車の台数は約1万4000台に増えた。国内シェアの約7割を握る最大手に成長し、パーク24の業績向上に貢献している(写真1)。

 勝因は、全国に約1万6500カ所ある時間貸し駐車場「タイムズ」にカーシェアの車を置くことで、利用者の利便性を高めたこと。しかもガソリン代と保険料込みで、15分206円からという低料金を打ち出し、日本では当時まだ珍しかったカーシェアを定着させてきた。会員数は2016年3月末時点で約60万人と、車をシェアする人は着実に増えている。

写真1●パーク24のカーシェアリングサービス
写真1●パーク24のカーシェアリングサービス
(写真提供:パーク24)
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 そんなカーシェアの躍進を秘密を探ろうと、今回記者は舞台裏を取材した。すると見えてきたのは、1つのKPI(重要業績評価指標)だった。パーク24はたった1つのKPIの追求を徹底することで、目新しいカーシェアのサービスを成長させてきたのである。

無人サービスだからこそ、電話にこだわる

 パーク24の最大の特徴は、無人サービスを提供していることである。車を運転する人ならよくご存じだろうが、貸し駐車場のタイムズには専用の装置があるだけで、管理者はいない。そのため、駐車場でもカーシェアでも「何か問題が起きると必ず電話がかかってくる」。パーク24のグループ会社で、電話応対業務を手がけるタイムズコミュニケーションの齊藤智之執行役員サービス推進部長はそう説明する。

 それならば、顧客からの電話には真摯に向き合い、1つずつ課題を解決していきながら、電話件数を減らしていこう。パーク24はそう考えたわけだ。

 そこで先ほど触れた1つのKPIを設定することにした。それがカーシェア向けのコールセンターの「入電率」である。入電率とは「カーシェアの利用件数当たりのコールセンターへの入電数」のこと。要はカーシェア1回のサービス利用で、顧客から何回電話がかかってくるかを見る指標である。

 「現場に当社の担当者を置かない代わりに、お客様からの電話の声はきちんと受け止めることから始める。そしてサービス改善を続け、結果的に電話件数が下がれば、顧客満足度は高まっていくと判断している。だから入電率をKPIに定め、徹底的にこだわることにした」。齊藤執行役員はそう語る。記者も「なるほど」と納得できた。