日本では2011年以来となる「Windowsスマートフォン」の新製品(Windows 10 Mobileスマホ)をNTTドコモが2016年4月に発売、KDDIも今夏に発売する。ただしいずれも自社ブランド(キャリアブランド)は冠せず、メーカーブランド(NTTドコモはVAIO、KDDIは日本HP)で提供する。両社とも今後、機種を増やしていく計画だが、「今のところキャリアブランドで提供する予定はない」(NTTドコモ、KDDI)とする。

 ここで気になるのが、キャリアブランドとメーカーブランドの線引きはどこにあるのかという点だ。KDDIによれば厳密な基準があるわけではないが、大きく次の2点が前提になるという。一つは「auブランドを付けた端末を在庫として持てるかどうか」、もう一つは「コンシューマーに売れるかどうか」である。後者に関して今回のWindows 10 Mobileスマホで言えば、「当面の販売を法人(企業ユーザー)向けに特化するためメーカーブランドとした」(KDDI)という判断に至った。

踊り場を迎える法人モバイル市場

 ではWindows 10 Mobileスマホがこれから参入しようとする企業のモバイル活用は現状どうなっているのだろうか。各種調査によれば、これまで右肩上がりで増えてきたスマートフォンやタブレット端末の新規導入に陰りが見え、生産性の向上などを目指した活用の取り組みにも一服感が感じられる。NTTドコモが2013年に米アップルの「iPhone」の販売に参入して以来、携帯大手3社が提供する端末ラインアップは横並びとなった。企業が採用する決め手は相対契約による値引きとなり、その競争で法人モバイル市場は拡大を続けてきたものの、そろそろ踊り場を迎えつつある。

 例えば日経コミュニケーションが2001年から毎年実施している「企業ネット/ICT利活用実態調査」(企業ネット実態調査)の2015年調査結果では、既にその兆候が見てとれる。まずスマートフォンの利用率(利用中の企業と具体的予定がある企業を合計した割合)から紹介しよう。2015年のスマートフォン利用率は47.4%と、2014年の調査結果に比べて5.3ポイント増えた。その一方で「利用しない」と回答した企業も4.7ポイント増えて30.3%に達した。そして“様子見”となる「利用の是非を検討」と答えた企業の割合は6.8ポイントの減少となった。

 つまり、スマートフォンの利用について白黒はっきりさせた企業が増えてきたわけだ。これは2005年の調査でIP電話の利用率に見られた傾向と同じもので、その後にIP電話の成長ペースが鈍った事実を鑑みれば、スマートフォンも同じ道をたどる可能性が高い。