米Dellは2016年10月までに米EMCを買収した後、「Dell Technologies」に社名を変更する(写真1)。かつて「デルモデル」を掲げ、テクノロジーではなくサプライチェーン管理を強みとしてきたDellが、EMC買収によって「テクノロジーの会社」を名乗るようになるわけだ。

写真1●2016年5月の「EMC World 2016」で新社名を発表する米DellのMichael Dell CEO(最高経営責任者)
写真1●2016年5月の「EMC World 2016」で新社名を発表する米DellのMichael Dell CEO(最高経営責任者)
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 かつてのDellを知る人にとっては、隔世の感があるだろう。なぜなら2000年代前半までのDellは、「業界標準のハードウエアとソフトウエアからなる製品を他社より安く販売する」ことだけに専念していた会社だったからだ。

 製品開発コストを抑えるために、研究開発に資金を投じず、米Intelのプロセッサを搭載する業界標準ハードウエアに、「Windows」や「Linux」といった業界標準ソフトウエアだけを搭載する「業界標準製品」のみを販売。流通コストを抑えるために直接販売に特化し、在庫コストを抑えるために「BTO(Build-To-Order:受注生産)」を原則としていた。組み立て作業やマザーボードの製造は、台湾企業に全面的にアウトソース。これを同社は「デルモデル」と呼んだが、このやり方はまずパソコン市場で、その後サーバー市場で大成功した。

 もっとも2000年代中頃に入ると、デルモデルは輝きを失う。Dellが製造をアウトソースしていた台湾企業が、パソコン市場やサーバー市場に参入。業界標準の製品を安く販売するだけでは、他社との差を付けることが難しくなったためだった。

2000年代後半に大きく方向転換

 こうした変化を受けて、Dellは2000年代後半に大きく方針を転換する。直販に加えて間接販売を始めると共に、ストレージの「EqualLogic」や「Compellent」、ネットワーク機器の「Force10」、運用管理ソフトウエアの「Quest Software」やセキュリティの「SecureWorks」「SonicWALL」などを買収。業界標準の製品をデルモデルによってとにかく安く販売する存在から、独自テクノロジーに基づく製品を販売する存在へと、大きく姿を変えていった。

 EMCの買収は、Dellの一連の変化の終着点と言えるものだ。EMCのテクノロジーを取り込むことで、いよいよDellの社名もテクノロジー会社のそれに変わる。重要なのは、EMCのストレージ装置を特徴付けているテクノロジーが、すべてソフトウエアに基づいているということだ。