4月半ば以降、熊本県を中心に甚大な災害をもたらした熊本地震。被災者の安否確認や避難生活、各地の復旧や支援を支えるべき携帯電話インフラもまた、大きな打撃を受けた。

 一時はNTTドコモなど大手3社合計で300基以上の携帯電話基地局が機能しなくなり、電話がつながらなかったり、つながりにくくなったりした。大手3社がサービスエリアを地震前と同程度まで復旧させたと発表したのは、最初の大規模地震の発生から10日程度後のことだ。

 だが、各社とも手をこまぬいていたわけではない。5年前に発生した東日本大震災の教訓を踏まえた様々な対策を講じた。今回はその中でも、各社が初めて投入した新しい通信技術に触れておきたい。

災害直後でも不通エリアをつぶす

写真1●災害時に遠隔操作で電波が届く範囲を広げるNTTドコモの「中ゾーン基地局」
写真1●災害時に遠隔操作で電波が届く範囲を広げるNTTドコモの「中ゾーン基地局」
(出所:NTTドコモ)
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 NTTドコモが熊本県内の5つの市町村に投入したのは、遠隔操作でアンテナの角度を調整し、電波の到達範囲を従来の基地局より広げられる「中ゾーン基地局」だ(写真1)。熊本地震の発生前は通常の基地局として使っていたが、周辺基地局が停止したことでアンテナ調整機能を災害対策として初めて運用した。具体的にはカバーエリアを通常の半径1キロメートルから半径3キロ〜5キロメートルに拡大して不通エリアを減らした。

 東日本大震災では基地局の損壊や水没のほか、基地局と携帯電話のネットワークを結ぶケーブルの断線も不通の大きな要因となった。中ゾーン基地局にはケーブルに加えマイクロ波と呼ばれる無線通信機能も実装。ケーブルが切れても無線で音声やデータを送れるよう通信経路を二重化してある。