携帯電話の販売適正化に向け、総務省が「スマートフォンの端末購入補助の適正化に関するガイドライン」(2017年1月31日に廃止、2月1日以降は「モバイルサービスの提供条件・端末に関するガイドライン」)の適用を始めてから1年が経過した。携帯電話大手3社は2016年4月に行政指導(KDDIは口頭注意)、2016年10月には行政処分(厳重注意+報告徴求命令)をそれぞれ受け、さすがに終息すると見られた。

 だが、年間最大の商戦期となる2017年3月にはキャッシュバックが一部で復活した。それも総務省のガイドラインに抵触しない形でだ。「いよいよ韓国方式(過剰な補助金を議員立法で禁止)を検討せざるを得なくなる」(有識者会議の構成員)といった声が早くも出始めている。

写真●総務省は2015年12月、携帯電話大手3社にスマートフォンの販売適正化を要請。
写真●総務省は2015年12月、携帯電話大手3社にスマートフォンの販売適正化を要請。
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あうんの呼吸で原資を捻出

 キャッシュバックが目立ったのはソフトバンク。競合事業者や販売代理店などから不満の声が相次いでいる。関係者の意見を総合すると、キャッシュバックは1月もあり、2月にいったん影を潜め、3月に大々的に展開された。4月に入り、ぱったりやんだという。春商戦の追い込みでキャッシュバックが横行した。

 2月には携帯電話の販売店に総務省の覆面調査が入っていた。ただ、消費者保護関連の取り組みがしっかり実施されているかどうかのチェックであり、端末購入補助関連の覆面調査ではなかった。2月の途中まで様子見の状況が続いたが、どうやら問題なさそうと判断して一部の量販店でキャッシュバックが始まった。他の代理店も一部で追随し、「3月はソフトバンクが大暴れの状況だった」(販売代理店関係者)。

 ガイドラインに抵触しない手口は至って単純。販売店の「独自の裁量」でキャッシュバックしたようにするだけだ。ガイドラインの対象はあくまで携帯電話大手3社による端末購入補助であり、個々の販売店による独自の取り組みまで厳しく制限していない。ガイドラインの策定当初から指摘されていた抜け道で、やはりそこを突いてきたかという印象である。

 販売店の独自の裁量とはいえ、ソフトバンク端末を対象にキャッシュバックが横行していたということはソフトバンクから原資が出ている。「光回線のインセンティブ(販売奨励金)が強化された」「量販店の売り場確保の手数料が上乗せされた」といった指摘が出ており、販売代理店関係者に言わせれば「得意のグレーゾーン。キャッシュバックや値引きの原資に使ってほしいと指示がなくても、あうんの呼吸で回すことになる」という。つまり、ソフトバンクはキャッシュバックや値引きの原資として支払ったわけではないため、ガイドラインの違反にはならず、セーフとなる。