「利用部門から機能追加や画面変更などの改修要望があったとき、人手に余裕があれば、具体的な内容を確認してそのまま受け入れてしまうSEが多い」。先日、あるITコンサルタントA氏に取材したとき、こんな話を聞いた。

 システムの保守開発において、改修要望をそのまま受け入れることの何がダメなのか。A氏によると、利用部門にとって本当に役立つ改修にはならないことがあるという。

 「利用部門が上げてきた改修要望の背景には、業務やシステムを改善したいという目的がある。その目的を聞いた上で、ITの専門家として最適な解決策を示すべきだ。利用部門からの要望は、自分たちで思い付いた解決策にすぎない」とA氏は指摘する。

 端的な例を挙げよう。グループウエアのスケジュール管理画面で「他の社員のスケジュールに会議予定を登録する際、既存の社員選択ポップアップ画面(部門別のツリー構造タイプ)は使い勝手が悪い。よく使う社員名を登録しておいて選べるようにしたい」という要望があったとする。この要望をそのまま受け入れて、登録した社員をプルダウンで選べるようにするのが最適解とは限らない。

 目的が「部門横断会議の予定登録の手間を減らしたい」というものであれば、会議体ごとの参加者をグループ化しそれを選べるようにしたほうがいいだろう。ワンクリックで参加メンバー全員を指定できる。「組織改編が頻繁にあるので、部門名が分からなくても他部門の社員を探せるようにしたい」という目的なら、社員の氏名の一部が入力されると、合致する社員名を自動で検索し一覧表示する、といった方法も考えられる。

 このように、改修要望の目的を聞いて、ITの知識を生かし最適な手段を考えることで、利用部門にとってより役に立つ改修になる。場合によっては、業務改善や既存機能の活用によって解決でき、システム改修の必要がなくなることもある。

「どうして必要なのか」と聞けない

 ところがA氏によると、改修要望の目的を利用部門に聞けない、あるいは聞かないSEが少なくないのだという。原因は“過剰な遠慮”だ。下手に「どうしてその改修が必要なのか」と聞けば、利用部門に「このSEは改修をしたくないのだ」と受け取られかねない。実際に、利用部門が気分を害したり怒ったりすることもある。そのため、立場が弱いSEは、目的を聞かないようになる。「利用部門から言われた通りに改修すればいい」という姿勢が、組織的な慣習になっている現場も少なくないという。